309号室のミンさん。2

◇YG ページ9

『ちょっとユンギさん！』

俺を見つけるなり、ちょいちょい、と手招きするAさん。



どうしたのだろうか、こんな風に彼女から呼び出されるのは珍しい。





「またドジしたんですか？」

『ヤー違います！私はそんなにドジじゃないし、後勝手に歌詞に採用しないでくださいよ！もうっ！』





と、例のソロ曲のことがついにバレてしまったらしい。まぁ、隠すつもりもなかったんだけど。



「気づくの遅いんですよ」

『あのですね、私はそういう、「…ダメでした？」




そう、ちらっと顔を下げながら見る。

お、ちょっと揺らいでる顔だな、これは。





とAさんは考えていることがそのまんま顔に出るから面白いし、わかりやすい。
絶対ポーカーフェイス向きではなさそう。





『…今更言っても遅いですしね』

「やった、ありがとうございます」

『もう今後はやめてほしいです』

「いいじゃないですか、俺だってアイデアもらえるのありがたいんですよ、これでも。

やー、Aさんって見ていて飽きないですし」



『褒めてないでしょ？もう、まったく…』





と、仕方なく折れてくれたみたいだけど。



そういうところ、目が離せないんだよなぁ。





『…………知ってます？曲にされるの恥ずかしいんですよ、結構』

「いいじゃないですか」

『…よくないです』



この、何気ない瞬間が、俺の心を溶かしてくれる。

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