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53. ページ11
『言って、るじゃないですか、構わないって』
一度決めたのに。
どうしてまた迷わせようとするのだろう。
…決めたのに。
…叶わないのは、分かってるからこその決断だった。
「……逃げてる」
『…え…？』
「自分から、逃げてるだけでしょ。
僕を、いつも見てない。
Aちゃんの心に、僕はいない。
そこまで分かってるのに、
どうして気持ちを押し殺すの？」
全部、図星だった。
何もかも、悟られていた。
…いや、分かってたんだ。
ずっと気付いていたのに、私は、
逃げて、
知らないフリをして、楽になろうとしていただけだったんだ。
「………こんなのに、縛られる必要はないよ」
そう言って、…婚姻届を破いた。
呆気なく、紙の断片は散っていく。
『…な、にしてるん、ですか』
「……僕のためじゃないよ。
Aちゃんのためでもない。
ただ、
末っ子が可愛くて、
末っ子の幸せを願う、
一人の馬鹿なヒョンとして、なんだ」
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作者名：つばき。
| 作成日時：2020年10月24日 11時
