【明治東亰恋伽】本と、剣と、ハイカラと。【愛され】

浪漫.25 ページ26

あれから数分間、｢いいですかAさん、女というのはね…｣と、梅雨に女性としての品位をべらべら聞かされた。

流石、吉原の女は一味違う。

女は華であるという概念が強く、真っ直ぐとした志は尊敬しかない。


｢ハイ…ハイ…｣とところどころ相槌を打っていると、｢…ちょっと。｣と少し不機嫌そうな声が後ろから聞こえた。



｢春草。｣

菱｢よくもあんなデタラメ言ってくれたね。｣

｢あれぇ？先にふっかけたのは私じゃないんだけどなぁ…。｣

菱｢……君さ、ホントいい性格してると思うよ。｣

｢そりゃどーも。｣

菱｢あぁていうか、どこ行くの？｣

｢…え、何が？｣

菱｢俺を待ってたってことは、俺となにかしたかったんでしょ？違うの。｣

｢……ごめん、行く宛てなかったから来た。｣

菱｢帰る。｣

｢ごめんごめんって！！｣



暇だから菱田に会いに来たのだが、まさかその先のことまで考えてくれていなんて。

案外自分と会えることを楽しみにしていたのでは、と期待できるほどの解答だ。


もう完全に頭にきている菱田は、Aの方を見向きもしてくれない。
現代で言う、ちょっと面倒な彼女的なやつである。

｢ごめっ、春草ってば…。｣と、追いかける彼氏の気持ちが何となくわかった気がする。


あまりにもこっちを見てくれないから、Aの方も腹が立ってグイッと菱田の頭を引き寄せた。









｢ちょっと…こっちくらい向きなよね。｣


菱｢ｯちょ、近いって……！｣


｢…何、このままキスでもしてあげようか。｣




ぎゅうっ…と目を瞑る菱田と、頬に手を添えるA。

少女漫画だと、
こういうのは逆なはずなのだが。

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