▼散歩 ページ13
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こんな優しい温もりに包まれたのはいつ以来だろうか。
大きくて私なんてすっぽりで、肩に触れる手も温かくて。
その手に触れて、長い指に指を絡めて目黒さんを見上げる私。
「……ふふ、大人と子供みたい。大きいね、目黒さんの手」
トンと頭を目黒さんの胸に預けて見上げたら、悲しげな瞳が私を見てて、ズキっと胸の奥が痛んだ。
悲しませちゃったかなって。
「大丈夫だよ。ここでね頑張って、いっぱい稼いで早く自由になるの。そしたら今度こそ、」
「今度こそ?」
「……ううん、あ、そろそろ時間よ。延長は……しないか」
パッと彼の腕の中から抜け出て名残惜しさに後ろ髪を引かれつつ、私から視線を逸らし腕時計を見て立ち上がった目黒さんを見送った。
「また」と微笑みかけたら、「無理すんなよ」と伸びてきた手が私の頭を撫でていく。
駄目よ。簡単に優しくしちゃ。
それは私のような女を傷つけるって、きっと貴方には分からない。
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久しぶりのお休みに、珍しく昼前には目が覚めたから買い物にでも行こうって家を出た。
仕事では淡い色を好んで着るけど、普段着はかなり地味。
Tシャツにスキニーパンツにスニーカー。
楽だからっていうのももちろんだけど、仕事以外でお客さんに出会ったとしても"まさか"って思うじゃん。
私にだってプライベートはあるんだもん。
「結局、Tシャツとパンツ買っただけか。たまにはスカートとか買った方がいいかな」
普段の女らしさがどんどん無くなっていくような気がしたけど、お金掛けてられないしな。
「ん、あれって」
橋の上で川を見つめてる男の人。
帽子を被ってるけど、少し近付いて見れば横顔が確かに彼だった。
「目黒さん!」
「え?」
「あ、」
しまった。プライベートなのに、ついつい声を掛けてしまって、あちゃーっと手を仰ぐ。
けれどやってしまった事はもう仕方ないので、もう一度目黒さんを見れば相手は誰だ?って感じで大きな瞳をパチパチさせてる。
その顔がいつもより幼く感じて可愛いなって。
「私、未来です」
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ゆきんこ(プロフ) - 雫さん» コメントありがとうございます!スッキリして頂けて良かったです!次も作品でも楽しんでもらえるように頑張ります!! (2021年6月26日 16時) (レス) id: f67eac9242 (このIDを非表示/違反報告)
雫(プロフ) - ネタバレ?ありがとうございました!そういうことなのか、、、スッキリ!話の内容もとてもおもしろかったです!次も楽しみにしてます! (2021年6月25日 23時) (レス) id: 760b825a9a (このIDを非表示/違反報告)
ゆきんこ(プロフ) - ちゃむ丸さん» ありがとうございます(^^) (2021年6月25日 22時) (レス) id: f67eac9242 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃむ丸(プロフ) - ゆきんこさん» 楽しみにしています! (2021年6月25日 18時) (レス) id: b0c8e366a3 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきんこ(プロフ) - mijeong0102さん» 初コメント有難うございます!なんとなく気付くことありましたか?それっぽいから確実な表現はしてないんですが、気づくとちょっと変かも?ってなればいいな程度なんです(笑)答えは後ほど後書きに+しておきます!これからも頑張ります! (2021年6月25日 7時) (レス) id: f67eac9242 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆきんこ | 作成日時:2021年6月7日 20時