▼ ページ11
・
うちの家はずっと貧乏だった。人に騙されやすい母が、友人の借金を背負わされたことから既に私の人生はこうなる運命だったのかも。
借金を背負ったことによって父に見捨てられ、駆け落ち同然で実家を出てた母は頼る人もなく私を一人で育てることになった。
最初こそ頑張ってくれていたと思う。
朝から夜中まで休みもなく工場とスナックで働いて、その仕事の合間に私の為に食事の支度や学校で必要な物の準備も頑張ってくれてた。
だから一人で過ごす夜も寂しくない。母が頑張ってるんだ、私も頑張るって。
夕飯を食べお風呂に入ってさっさと布団に潜って寝てしまえば直ぐに朝が来る。
「そんな生活が３年くらいは続いたかな？ で、母に男ができた。スナックのお客さん」
そこから母は変わった。
よくある話で男にハマって駄目になっていった。
何もかも疲れてたんだろうね。
そんな時に優しくしてくれる人が現れたら、誰だって頼りたくなるだろう。今ならそう思えるよ。
「だんだん家に帰って来なくなって。お金だけ置いていくようになった。で、男と別れたらまた帰ってくるの」
「ネグレクト…か、」
胡座から体勢を変えて、立てた片方の膝の上に腕を乗せる。うっすらと浮かぶ血管をボーッと見つめながら、また思い返した。
「それから男に依存しお酒に依存し、母は壊れていった。私が中学になった時、居なくなった」
「また男？」
「ううん、自分で人生を終わらせたの」
「……ごめん。もう大丈夫だよ」
予想以上だったんだろうな、私の話。
きっとこの人はとっても幸せな環境で生きてきたんだろう。
他人の話にこんなにも苦しそうに顔を歪めて、握った拳を震わせてる。
ほんと変な人だ……
「えぇー、どうせなら最後まで聞いてよ」
「……辛くねえか？」
「そんな感情、とっくの昔に置いてきた」
「はあ、未来」
目黒さんはおもむろに立ち上がったかと思うと、笑ってる私の隣に腰を下ろした。
ちょっとびっくりだ。目黒さんが自ら私に寄って来たのはこれが始めてだったから。
ピタリと肩を寄せて、「ンなもん置いてくんなよ」と消え入りそうな声でボソッと言った。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1451人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆきんこ(プロフ) - 雫さん» コメントありがとうございます！スッキリして頂けて良かったです！次も作品でも楽しんでもらえるように頑張ります！！ (2021年6月26日 16時) (
レス) id: f67eac9242 (このIDを非表示/違反報告)
雫(プロフ) - ネタバレ？ありがとうございました！そういうことなのか、、、スッキリ！話の内容もとてもおもしろかったです！次も楽しみにしてます！ (2021年6月25日 23時) (レス) id: 760b825a9a (このIDを非表示/違反報告)
ゆきんこ(プロフ) - ちゃむ丸さん» ありがとうございます(^^) (2021年6月25日 22時) (レス) id: f67eac9242 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃむ丸(プロフ) - ゆきんこさん» 楽しみにしています！ (2021年6月25日 18時) (レス) id: b0c8e366a3 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきんこ(プロフ) - mijeong0102さん» 初コメント有難うございます！なんとなく気付くことありましたか？それっぽいから確実な表現はしてないんですが、気づくとちょっと変かも？ってなればいいな程度なんです(笑)答えは後ほど後書きに＋しておきます！これからも頑張ります！ (2021年6月25日 7時) (レス) id: f67eac9242 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆきんこ
| 作成日時：2021年6月7日 20時
