人魚姫になりました。【爆豪勝己】 (ページ10)

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9話・5センチメートルページ10

確か結野とか言ってたな

全身を見てみる

「怪我はねーな」

口から勝手に漏れた

…聞こえてねぇよな？

『あのっ』

「あ？」

話しかけられるなんざ思ってなかったから切れてる見てぇな声が出る

『その…ありがとうございます』

「俺の通り道に居たからだ別にお前のためとかじゃねぇ」

…これは本心なのか？

『いや…でも…ほんとに助かりました…そのッ…私…今までｯｸ誰かに助けられたこと…ｯｸなくて…ヒック』

目の前で泣き出す

デク以外を泣かせたことはほとんどねぇから混乱する

…自販機が目に入った

そうだ俺は飲みもん買いに来たんだった

スポーツドリンクを2本買う

戻ってきても何をしたか見えていないようだ

おでこのところにスポーツドリンクをあてる

「飲めお前体の水分全部出てきそうだ」

既に足元にちいせぇ水溜まりが出来ていた

結野は最初は戸惑っていたが蓋を開けて飲んだ

ちらりと目が見えた

結界の色と同じ綺麗な赤色

…見たい

本能的にそう思った

「お前さぁ」

でけぇ声が出た

『はい…なんでしょうか…』

伸びきった前髪に手を伸ばす

怯えている

すっと優しく前髪をたくしあげる

丸く

紅く

とても澄んだ瞳が

見開いていた

…ドクン

心臓が動く

なんだこれ

『いやっ！』

後ろに後退して手で顔をおおった

怖がらせた

何か言わねぇと…

…

「おい」

沈黙を破る

返事はない

「堂々としてりぁいいんだよそうしてりゃモブ共なんてなんもしてこねぇ」

何言ってんだ俺

今までモブ共に助言なんてしたこと無かったのに

結野の表情が変わる

目に光が宿る

『堂々と…』

スッとした綺麗な声

…ドクンドクン

なんだこれ

心臓がうるせぇ

顔に熱が集まる

「じゃあな」

平静を装ってその場を立ち去る

少しして逃げるように走り去る

顔を拭う

廊下にある鏡に俺が映る

真っ赤になったひでぇ顔だ

そこまで走ってねぇのに心臓が止まらない

…なんだこれ…

なんだこれ…

「ｯはぁ…」

壁に寄りかかる

頭の中からあの紅い目が離れなかった