とある三姉妹の仕舞い話 【フリーアートシリーズ】

47話 ページ48

それから俺は毎日といっていいほど、馬鹿になったといってもいいほど、硝子を口説いた。恥ずかしがらずに積極的にアピールした。母さんからマセガキとか言われたけど痛くも痒くもなかった。最初の方だけ、ちょっと恥ずかしかったけど。


　とりあえず、硝子が心配だったのだ。親権のこととか色々。もう、葬式にあんなに外国人が来られては焦らずにはいられなかったのだ。外国にお引越ししないか、もう気が気じゃない！


　でも俺が馬鹿になったところで硝子の天然型馬鹿には叶うはずもなく、調子外れな返答ばかりされた。付き合おう、といったら北海道なら付き合ってもいいとかいう話になるし、結婚しようといっても漫画のフレーズを思い出してしまうのか、そっちの再現が繰り広げられてしまったり。


　秋。硝子が何かの契約書にサインしているところを見た時なんて、お父さんらしき人を殴りそうになった。あまね姉ちゃんから聞いた話では、成人になるまで保護金をもらう約束の書類らしい。硝子に大笑いされて本気で恥ずかしかった憶えがある。


　冬。あまね姉ちゃんは第一志望校に合格、すばる兄ちゃんも同じところに受験して合格した。すばる兄ちゃんは頭がいいから東大も夢じゃないとか言われてたけど、見向きをしなかった所を見るにきっとあいつらデキてる。


　梢姉ちゃんは三股をかけていたことが発覚。どれも下僕だよと謳っていたことが衝撃的だったので長々と書きたいが、すばる兄ちゃんが興味なさそうにしていたので辞めておく。


　あまね姉ちゃんと梢姉ちゃんは高校の寮に移動。私立はやっぱり財産が多いんだなあ、と思い知らされた。親のサインは特別な理由で免除されたが、緊急連絡先は外国のお父さんと俺の父ちゃんということになっている。
　それに比べ俺と硝子は県立。寮はない。家に硝子ひとりを閉じ込めておけるはずもなく――。




「あると、硝子ちゃん。水筒いれたから持ってってね」
「うぃー」
「ありがとうございます」




　高校２年。


　硝子は俺ん家に住んでいて、第一志望校はふたりで一緒の所を書いた。俺が無理矢理みせろ、と脅したのもある。これは内緒の話。


　さすがにふたり一緒の部屋ではないけど、まあそれなりに楽しくやっている。


　たまに、大学の寮からすばる兄ちゃんとあまね姉ちゃんから手紙が届く。梢姉ちゃんからは毎日電話がくる。硝子はそのたびに奇声をあげて喜ぶんだけど、まあ気持ちが分からんでもないので吉とする。

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