42話 ページ43
「硝子、お前にベッド譲ってやるけどいいか? なだれてくるなよ」
「ああ、おけおけ」
プリングルズを食べながら上の空で返事をする硝子。持ってきた漫画本を壁にもたれかかって読んでいるが、その姿が信頼に欠ける。ベッドに転倒防止柵がないので本当に危ういのだ。頭を投げ出されたら強打して終わりだ。
ちゃんと聞いてんのか、と怒りたくなったがやめた。風呂上りになると髪形が変わって雰囲気も全然違ってくるというか、別人に見えて仕方ないのだ。ドライヤーで乾かした髪の毛がまだしっとりと湿っていて、部屋の照明に反射し艶々と輝く。顔が顔なだけに憎いほど可愛い。
「風呂入ってくる」
「おけー」
俺はドアの隙間が閉じられるまでその姿を見送った。風呂に入るほんの30分間のことなのにどうしてこんなに変な気分になるのか。いらない緊張感と共に部屋を出た。
*
○ side 硝子 ○
ドアが閉じられる音と階段を全て降りた音を確認したあと、漫画本の上に重ねていた英語の暗記帳を出した。目線を急降下させてこそこそ覚えていたので、かなり姿勢的には無理があった。首をぐるぐると回し、ベッドに足を投げ出し、枕の下に隠していた英語の参考書も出してくる。
他に人がいると堂々と勉強出来ない。勉強することはいいはずだけど、誰かに見つかると馬鹿にされそうで。成句を口でぶつぶつと呟き、頭に叩き込む。無音の空間が私にとって一番集中できる。
「おい、硝子」
「う、にゃ!」
「ごめん起こした? あ、勉強か……」
「なに、どうしたの」
「1階の電話。あまねが病院から電話してきてるんだけど、なんか話してやれ」
「わかった」
病院に行ってもあまね姉ちゃんはまともに話せない状態が続いていたので、立って公衆電話がかけられるほどに回復したのを嬉しく思った。階段を転がるように降りて行って玄関前に設置されている電話を取る。
「もしもし、あまね姉ちゃん。硝子だよ、元気してる?」
「今点滴受けてるとこ。ごめんね、迷惑かけちゃって」
「ううん、迷惑とか思ってないし。早く元気になって帰ってきてね。あるとのお母さんもお父さんも心配してるみたいだったし。
さっきニュース見たんだけどね、うずらの卵って頑張ったらヒナがかえるらしいんだよね。あとね、クリスマスケーキいーっぱい食べた!」
2人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
PP - そうだったんですか。お話の展開や一人一人の色んな個性や想いが丁寧に描かれていて、情景が目に浮かぶようです。何故か私の一番思いだすシーンがお母さんが盛塩をフライパンで煎るシーンです(笑)また素敵な作品楽しみにしてます。 (2016年5月19日 17時) (レス) id: e76cee042d (このIDを非表示/違反報告)
レイチェル・ハジェンズ(プロフ) - PPさん» 実はこの作品、レイチェルの家族と、片想いしてる人の家族構成をそのまま持ってきてるんですよね。内容もそれに近付けて、結構重たくしてみました。読んでくださり、ありがとうございます(*^^*) (2016年5月19日 17時) (レス) id: 3a04122313 (このIDを非表示/違反報告)
PP - 追伸☆ごめんなさい!「こんにちわ」のつもりが「こんにちわんだぞ(何の意味だよ)」と…スミマセン! (2016年5月19日 9時) (携帯から) (レス) id: 0625209047 (このIDを非表示/違反報告)
PP - こんにちわんだぞ☆毎日読み進めてましたが続きが楽しみな作品でした。3姉妹が10代にして重過ぎる事情を抱えてても明るく生きる姿に勇気をもらいました! (2016年5月19日 9時) (携帯から) (レス) id: 0625209047 (このIDを非表示/違反報告)
響稀(プロフ) - リクエストの硝子ちゃん完成しました!!サイトにてお待ちしてます! (2016年4月13日 23時) (携帯から) (レス) id: 0a116ef314 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:レイチェル・ハジェンズ | 作者ホームページ:https://twitter.com/seshiru777777
作成日時:2015年12月14日 20時