３話 硝子の席 ページ4
硝子はほとんど毎日といって良いほど、俺の家に夕食を食べにくる。今日は午前中で学校が終わったので、いつもの下校の流れで昼食もよばれてしまおうという魂胆なのだろう。
玄関でローファーを脱ぎ、「お邪魔します」と言ってリビングに繋がる廊下を先に行く。俺も続いてスニーカーを脱いで、硝子のローファーと自分の分を順番に揃えた。硝子は知っているのだ。俺が一緒に自分の分も揃えてくれることを。女王さまか！
「今日は硝子ちゃんの大好きな肉じゃがでーす」
「おばさん、何時もありがとうございます」
「気にしないで食べてって」
俺の母さんは硝子と仲睦まじそうに話をする。小学生の頃からの付き合いなので、ふたりは母娘に近い関係なのだ。それに母親同士も仲が良くて、近所で話し込んでいるのをみかけた。……何年前の話だろう。
硝子は学生鞄を椅子の下にいれて、俺の向かい側の席へストンと座る。背後にあるガラス戸から太陽の明かりが注ぎ込まれると、硝子の髪の毛が亜麻色にみえて綺麗だ。しかもガラス戸に控えるように物干し竿があるので家庭的な感じにも見えてしまう。
何時も硝子はこの席だ。俺は可愛い硝子を真正面から見れる魔性のスポットを独り占め出来る訳だ。こんなに微笑ましいものはあるか。
うっとりして硝子を見詰めていたら、「ん」と小首をかしげた。一体どうしたというのか？ そして言い辛そうに口を開けた。
「あの……、急にお昼食べに来ちゃってご迷惑じゃなかったですか？」
「ああ、それね？ 実はあるとがね……」
「ああああああ!!!! 言わないで、言わないで!!!!!!」
肩にかけていた学生鞄をドサッと落とす。慌てて母さんの口を両手でふたし、冷静になって硝子に説明した。
「実は今日、兄ちゃんが帰って来れそうだったんだけどちょっと用事が入っちゃったみたいで、でもお母さんは作っちゃったから誰か食べてくれる人を探してたんだよね！ ね、母さん？」
「そうなの？」
「そ、そうなのよ。お兄ちゃん、クラブの予定がさっき入っちゃったみたいでね」
「じゃあ……、遠慮なく頂きます」
俺はホッと胸を撫で下ろし母さんを解く。硝子はもう既にお箸を持ってすたんばっている。母さんは俺の耳元で、「男らしくないんだから」と言って味噌汁を取りに行く。
「男らしくないって……」 反芻。
こんなに、こんなに頑張ってるのにとアピールしたいが今のは反論出来ない。
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PP - そうだったんですか。お話の展開や一人一人の色んな個性や想いが丁寧に描かれていて、情景が目に浮かぶようです。何故か私の一番思いだすシーンがお母さんが盛塩をフライパンで煎るシーンです（笑）また素敵な作品楽しみにしてます。 (2016年5月19日 17時) (
レス) id: e76cee042d (このIDを非表示/違反報告)
レイチェル・ハジェンズ(プロフ) - PPさん» 実はこの作品、レイチェルの家族と、片想いしてる人の家族構成をそのまま持ってきてるんですよね。内容もそれに近付けて、結構重たくしてみました。読んでくださり、ありがとうございます(*^^*) (2016年5月19日 17時) (レス) id: 3a04122313 (このIDを非表示/違反報告)
PP - 追伸☆ごめんなさい！「こんにちわ」のつもりが「こんにちわんだぞ（何の意味だよ）」と…スミマセン！ (2016年5月19日 9時) (携帯から) (レス) id: 0625209047 (このIDを非表示/違反報告)
PP - こんにちわんだぞ☆毎日読み進めてましたが続きが楽しみな作品でした。３姉妹が１０代にして重過ぎる事情を抱えてても明るく生きる姿に勇気をもらいました！ (2016年5月19日 9時) (携帯から) (レス) id: 0625209047 (このIDを非表示/違反報告)
響稀(プロフ) - リクエストの硝子ちゃん完成しました!!サイトにてお待ちしてます！ (2016年4月13日 23時) (携帯から) (レス) id: 0a116ef314 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：レイチェル・ハジェンズ | 作者ホームページ：https://twitter.com/seshiru777777
作成日時：2015年12月14日 20時
