24話 硝子を原付で迎えに行く ページ25
○ Side すばる ○
家に猛ダッシュで帰ってお母さんに、「病院に行くから」と叫んだ。はあ? と返事が聞こえたが、説明している時間はない。玄関にクラブバッグを投げ捨て、原付キーを左手で取る。学校に内緒でとった原動機付自転車が今日役に立つとは。
俺は自転車置き場に急いで、自分の原付にキーを差し込んだ。使うこともなく放置したまま3ヶ月経っていたが、何の狂いもなしにぶるるん、とエンジンをかかったところを見ると正常だ。指示器の点滅の不備もない。よし、いける。ヘルメットを被ってアクセルを効かす。
「あれっ。すばる兄ちゃん」
「おかえり、ひよこ。お母さんに落ち着いたら電話するって伝えて」
マロニエの木を左手にしながら進むとちょっとした下り坂にさしかかり、さらに加速してアイツの家へ。前は白のペンキが綺麗な家だったが大分劣化して負のオーラがあるというか。遊びに行くと中は綺麗なんだが、外が異様に残念すぎる家。
「すばる兄ちゃん!」
「硝子、乗れ」
ドアが開いて硝子の真っ赤な顔が覗く。手には1枚の保険証。硝子はローファーを乱雑につま先にひっかけ、バランスを取りながらこっちに向かってくる。だが、変なのだ。緑の半袖Tシャツに短パン。真夏というか、気温すら感じていない恰好なのだ。
俺からヘルメットを手渡された硝子は何食わぬ顔で受け取り、紐の調整をしている。俺はクラブの上着を着ていたことを思い出し、硝子の肩にかけてやった。
「硝子、どうしたんだその恰好」
「何かおかしい?」
「いいから、もうチャックあげとけ」
この道は人目もほぼないので良かったものの、俺は高校の規則を守らずに免許を取得した訳で。下は自前のジャージだが、上はバスケクラブと描かれたチームのユニフォームなのである。だから上着を硝子に着せられてラッキーだし、これで後ろ指をさされることもなくなる訳だ。
「ちゃんとつかまっとけよ」
硝子が後ろに跨ったところで再びアクセルで加速する。腰に回された腕が高校生にしては頼りないくらい細くて、でもあまねの保険証を握っている腕には力が入っていて。俺のみない間にコイツには一体何があったんだと思うほど、別人に変わっていた。
25話 硝子の異変に戸惑うすばる→←23話 硝子の死にそうな声を辿る
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PP - そうだったんですか。お話の展開や一人一人の色んな個性や想いが丁寧に描かれていて、情景が目に浮かぶようです。何故か私の一番思いだすシーンがお母さんが盛塩をフライパンで煎るシーンです(笑)また素敵な作品楽しみにしてます。 (2016年5月19日 17時) (レス) id: e76cee042d (このIDを非表示/違反報告)
レイチェル・ハジェンズ(プロフ) - PPさん» 実はこの作品、レイチェルの家族と、片想いしてる人の家族構成をそのまま持ってきてるんですよね。内容もそれに近付けて、結構重たくしてみました。読んでくださり、ありがとうございます(*^^*) (2016年5月19日 17時) (レス) id: 3a04122313 (このIDを非表示/違反報告)
PP - 追伸☆ごめんなさい!「こんにちわ」のつもりが「こんにちわんだぞ(何の意味だよ)」と…スミマセン! (2016年5月19日 9時) (携帯から) (レス) id: 0625209047 (このIDを非表示/違反報告)
PP - こんにちわんだぞ☆毎日読み進めてましたが続きが楽しみな作品でした。3姉妹が10代にして重過ぎる事情を抱えてても明るく生きる姿に勇気をもらいました! (2016年5月19日 9時) (携帯から) (レス) id: 0625209047 (このIDを非表示/違反報告)
響稀(プロフ) - リクエストの硝子ちゃん完成しました!!サイトにてお待ちしてます! (2016年4月13日 23時) (携帯から) (レス) id: 0a116ef314 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:レイチェル・ハジェンズ | 作者ホームページ:https://twitter.com/seshiru777777
作成日時:2015年12月14日 20時