10話 ルビーの占い館 ページ11
バイトが休みの日、なんとなく俺は街を出た。目的地がある訳でも、友人との約束もなかったが、今日家にいるのは癪な気がして居られなかったのだ。母とふたりだけ、というのも気にくわない。
所狭しと並んでいる店は、こんな日であるからか何時もより繁盛しているように見えた。チラリと視線を向けては、溜息をついて入るのを躊躇う。その繰り返しだ。
駅前の商店街はマライアキャリーのクリスマスソングがBGMとしてかかっていて、キラキラした街並みにとても良く合っていた。他人の笑顔がこんなに眩しく見えるのは、誰かの魔法なのだろうか？ 自然現象なのだろうか？
また溜息を漏らしそうになった時、身体が無意識に波動したような感覚になった。驚いて前を見ると、人込みの中から一際浮きだったおばあさんがひとり、視界に入ってきた。
「そこの青年」
「俺ですか？」
大手和菓子屋チェーンと昔に閉店した理容室の間隙にひっそりと佇むおばあさん。魔女のような黒衣がよくお似合いだ。
「え、本当に俺？」
青年というのは自分のことなのか、と親指を出してみたが正解。おばあさんの目が細くなり、肉の付いたソバカスだらけの頬が嬉しそうに緩んだ。
この辺りはセールスや宗教の勧誘が多いと聞くが、果たして俺は餌食になってしまったんだろうか？ いや、でも金のない学生なのでそんなことはないだろう。何か尋ねたいことがあって俺を呼んだに違いない。
半信半疑でおばあさんに近づいて行くと、ほのかに林檎の匂いがした。こんなよぼよぼなおばあさんには不釣り合いで品の良さそうな匂い……と言ったら失礼だろうか。
「よく来なすった。
ようこそ、ルビーの占い館へ」
「う、占い館？」
「そうともさ」
快活に話すおばあさんの前で、俺は頭を掻いてしまった。館と言えど見えるのは暗い間隙だけ。館と呼べるようなオブジェクトは何もないが……。もしかすると酔っぱらいか？
「お前さんは恋の悩みを持っておる。もうオーラからプンプンしとるわ」
「？」
「彼女の心は一体誰のものなのか、気になっているのはそれだね？」
ゴクリ。
硝子の心はだれのものなのか。俺はおばあさんの言葉に息を飲んだ。
11話 ルビーのお告げ→←９話 すばるとあまねの秘密 side -すばる-
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PP - そうだったんですか。お話の展開や一人一人の色んな個性や想いが丁寧に描かれていて、情景が目に浮かぶようです。何故か私の一番思いだすシーンがお母さんが盛塩をフライパンで煎るシーンです（笑）また素敵な作品楽しみにしてます。 (2016年5月19日 17時) (
レス) id: e76cee042d (このIDを非表示/違反報告)
レイチェル・ハジェンズ(プロフ) - PPさん» 実はこの作品、レイチェルの家族と、片想いしてる人の家族構成をそのまま持ってきてるんですよね。内容もそれに近付けて、結構重たくしてみました。読んでくださり、ありがとうございます(*^^*) (2016年5月19日 17時) (レス) id: 3a04122313 (このIDを非表示/違反報告)
PP - 追伸☆ごめんなさい！「こんにちわ」のつもりが「こんにちわんだぞ（何の意味だよ）」と…スミマセン！ (2016年5月19日 9時) (携帯から) (レス) id: 0625209047 (このIDを非表示/違反報告)
PP - こんにちわんだぞ☆毎日読み進めてましたが続きが楽しみな作品でした。３姉妹が１０代にして重過ぎる事情を抱えてても明るく生きる姿に勇気をもらいました！ (2016年5月19日 9時) (携帯から) (レス) id: 0625209047 (このIDを非表示/違反報告)
響稀(プロフ) - リクエストの硝子ちゃん完成しました!!サイトにてお待ちしてます！ (2016年4月13日 23時) (携帯から) (レス) id: 0a116ef314 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：レイチェル・ハジェンズ | 作者ホームページ：https://twitter.com/seshiru777777
作成日時：2015年12月14日 20時
