らくがきーーー！！ (ページ8)

今日:9 hit、昨日:2 hit、合計:3,696 hit

制服のスカートページ8

この前、撫子は電車に乗った。

　朝の通学電車である。

　いつもはリムジンにも似たセレブの車を愛用していた撫子だが、その日は何故だが電車に乗りたい気分だったのだ。

　無理もない。

　撫子は日本でも指折りのお嬢様だ。社長令嬢であられる。

　学校にいる間を覗き、常に誰かの監視下にある。

　誘拐され命が危なくなる心配もあるのだ。監視というのも致し方ないこと。

　だが、撫子は社長令嬢である前に一人の人間なのだ。

　頭が誰よりも働く故、ひとりでぼうっとしたい時もある。

「…………」

「…………」

　撫子は朝陽をぼうっと見ながら電車に揺られていたのであるが、同じ車両に不自然に密着する男女がいた。

　一人は女子高生だが、一人はそうではない。

　春に似つかわしくない黒のダウンジャケットを着て、汚らしいズボンをはいている。

　女子高生の後ろに男がいて、妙に密着している。

　座る席は空いていないが、それほど人が車両に詰まっているというほどでもない。

　撫子は女子高生の怪訝そうな表情を見て、学生鞄を肩にかけて椅子から立ち上がった。

「……すみません、そこのあなたたち」

「あ？」

　黒のダウンジャケットをきた男は硬直し、撫子を鋭い眼でみた。

「そちらの女性に妙に密着しているようですが。一体どうされたのですか？

　……それから、その手に持っているハサミはなんでしょう？」

　撫子が少し声を大きくして言うと、車両にいた人々がざわっと声をあげた。

「……は？」

「私は貴方が女子高生のスカートをそのハサミで切っているような気がするのですがね」

「くそっ」

　撫子に向かってハサミが振り下ろされる。

　だが、撫子は茫洋とした瞳に男を映しているのみだ。逃げようとも怖がろうともしない。

「おやめなさい」

　撫子の目の前に立ちはだかるのは、黒色のスーツを着た男だった。

　ハサミを持つ男からハサミを取り上げ、身動きのとれないように技をかける。

「うわあっ」

「きゃっ」

「……やはり、見張りがいましたか」

「見張りはいらないとおっしゃっていましたのに……申し訳ございません」

「本人が嫌なことだと分かっていてもやる。貴方はそこの男の人と変わりませんよ」