らくがきーーー！！ (ページ6)

今日:14 hit、昨日:2 hit、合計:3,701 hit

それでもページ6

放課後、今日は撫子は河川敷に来ていた。

　空はうっすらと茜色に染まり、東の空には一番星がみえている。日が沈んで気温が下がり、人々は足早に家に帰ろうとする。

　穏やかな波と、穏やかな風。ゴミひとつ落ちていない綺麗な河川敷で、芝生も短く整えられている。まるで誰かの私有地みたいに。

　撫子の手にはコンビニで買ったうまいぼーが一本。

　黄色の包み紙。

　コーンポタージュ味。

　茫洋とした瞳に映るのは向こう岸の河川敷と、それから小さな雑木林。風がふくたびに草木が揺れ、撫子のおかっぱの髪の毛は顔に当たる。

「……はぁ」

　河川敷の道を真っすぐにいった先には橋がある。車のライトがやたら眩しい。色の明るい車、暗い車、遅い車、車高が高い車、いろんな車が通っていく。

「……家に帰りたくない」

　ああ、これがサラリーマンの父親の心境か。

　撫子はぽむ、と掌をたたいた。

　学校で何かがあった訳ではない。誰かが窓ガラスを割って犯人がわからず、

　連帯責任といって担任の先生が帰らせてくれなかった、

　だから下校の時間が遅くなってしまった――今日は放課後に誰もいじれなかった、

　だから未練がましく家に帰りたくない、という気持ちを引きずっているのでは、けして、ない。

　撫子の家は所謂旧家というやつで、付き添いの執事や専属の家庭教師だっている。親の育て方は他の家庭と比べて段違いに厳しく、冷酷だ。

「……ここにいらっしゃいましたか、お嬢様」

　撫子は顔を上げた。

「帰りましょう」