らくがきーーー！！ (ページ27)

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仕事終わりの倦怠感ページ27

「あー、なんだか調子が悪い」

　一人暮らしの家は、とても静かだ。テレビでもつけない限り賑やかになることもないし、急な来客といったらNHKの集金のおじさんくらい。

　仕事が終わったのは夜の６時半。私の職場は５時が定時なので、１時間半の残業になる。そこから駅まで歩いて地下鉄の電車に揺られ、マンションまで歩く。駅近なんて言うなっと笑ってやりたくなるような距離だ。

　自分の部屋は５階にある。時々他の住人と一緒にエレベーターに乗る。

　その人は煙草臭かったり、お寿司屋さんの匂いがしたり、機械油の濃密な臭いがしたり、色々だ。

　ただし、皆生きている匂いがする。

　それぞれの生活をちゃんと送っている、儚くて、どこか勇ましい匂いがする。

　私はその匂いが好きだ。私はどんな匂いがするのだろう。

　仕事で疲れ果てた体をベッドに沈ませる。昨日柔軟剤でシーツと布団カバーを洗ったから、自分の好きな心地のいい匂いがした。

　鼻を埋めてみれば、すーっといい匂いが入ってくる。

　仕事で疲れ果てた体は、すぐに癒しを求めているようになっているのだろうか。
　疲れた時はもうほっといてくれ、何もしたくない、ぼーっとしてたい、という欲望が勝るのかと思っていたのだが。

　私が若いからか？

　それともただ単にまだ気力があるだけ？

「……ゴハン、しなきゃな」

　時計をみたら７時。今からゴハンを作らないといけない時間だ。

　起き上がってキッチンに立たなきゃ、ベッドでこのまま寝てしまいそうになる。それも幸せだけれど、でも、やっぱり。

「私も、ちゃんと生活したいから」

　そんなことをつぶやいて、上半身を起こした。

　マンションのエレベーターは、私にとって小さな社会だ。社会が動いてまわっている証拠だって、私は思う。

　それぞれの小さな世界に繋がるエレベーターのおかげで、ちょっとだけ頑張ろうと思える。

「確か冷蔵庫にキャベツと豚肉があったなー」

　冷蔵庫には、ちゃんと食材が入っている。過去の私が、ちゃんと生きてた証だ。

「あ、卵もいれちゃお」

　Ｍサイズの小さな卵。これをいれるだけですぐに私の好物になると知っている。

　フライパンに油をそそぎ、カチカチと音をさせて火をつける。

　その間に私はキャベツを切った。キャベツを育ててくれた農家さんがいて、卵をうんでくれたニワトリがいるのだ。

　そう思うと、なんだか――。