らくがきーーー！！ (ページ23)

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お腹の痛みページ23

嫌な予感がするとき、人の顔色が変わる。

　私の母はその手のものにひどく鋭くて、先ほど笑顔だったのに次の瞬間には肌色が青くなっていた、ということがあった。

　母が口角をぎゅっとさげて、キリキリと痛むお腹を左手の平でおさえる。

　それが嫌なことが起きる合図だ。

　何が起きるかは、母も茫洋としかわかっていない。

　それは予言にも似ているし、予測にも似ているそうだ。

　私が5歳の時。

　小さなアパートでの貧乏生活。

　でも、母はいつでも私のそばにいてくれて、大事にしてくれて、順風満帆な生活を送っていた。

　なぜ母が働きに出てなかったかは分からないけど、小さい私にはそれを問うだけ脳が育っていなかった。母がいて当たり前で、それを質問するのは違うと思ったからだ。

　今は少し聞きづらい。

　母が私の大好きなマカロニグラタンを作ってくれて、もうすぐ昼食だというとき。

　母の笑っていた表情が崩れた。

　どんよりとした表情になって、左手ですぐにお腹を押さえた。

　マカロニグラタンがのった御盆は床におちて、容器が派手な音をたてて割れた。

　母は崩れ落ちる前に、寝室にいって布団の上に転げた。

　ひどい過呼吸。

　私は子供ならがら異常が起きているということを察知して、こたつから出た。

　母のもとに駆け寄り、背中を摩る。

　この異常が私には怖かった。

「ママ、ママ？大丈夫？」

「はぁ、はぁ、はぁ」

「ママ？」

　母は私を抱きしめた。両腕でがっしりと、力強く。

　母の過呼吸は2，3分ほど続いた。

　母が死んでしまうんじゃないだろうか、病気になったのだろうか。

　私はどうすればよくて、助けてくれそうな人は近所にいないか？

　このまま母を放置して、母が違う行動をすることを待つしかできない。

「ママ、ママ、大丈夫？」

「はぁ、はぁー、はぁ、はぁ。だい、……大丈夫だから。心配かけてごめんね。

　なんか急に息苦しくなって、体が痛くなって」

「ママ、寝てなくて平気？」

「うん……。ご飯ダメにしちゃったよね。今日はもうなにか買ってこようか」

「…………」

　ぷるる、と家の固定電話がなったのはその時だ。

　携帯電話がまだ普及していない時代だったから、連絡は固定電話が頼りだった。

　母は少しふらつきながら立ち、電話へと急いだ。