らくがきーーー！！ (ページ20)

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勝負の行方ページ20

猿が鎌で男の首を狩りとろうと、腕に力をこめて一閃を放つ。

　

　警察の男は刀に青色の炎を宿らせ、猿の皮膚を強く抉るように薙ぎ払う。

　猿の鎌がきらりと月夜に一段の輝く。

　葉っぱのようにくるり、と翻ったのだ。

　その動きは、自然や重力を無視した動きだ。

　警察の男はそれを見逃すはずがない。

　警察の男は動きを止め、屋根の上で猿とぶつかりあった。

　そして、自分の持っていた刀が、猿の方ではなく自分の方に向いているのに気付いた。

　猿は二本の鎌を器用に使い、警察の男に自分を斬らせようとしていた。

　猿の手首に青筋が浮いている。

　警察の男の輪郭に汗が滲んでいる。

「おっと。そんなに自分の刀で自分を傷つけるのが怖いかい？ぎひひっ。

　大した我儘だなぁ？その刀でいくらの数を斬ってきたんだぁ？」

「さぁなぁ？俺が俺の刀で俺の体を傷つける時は、果たしてどんな場面なんだろうなぁっ!?」

　警察の男が猿より力を入れ、武器ごと猿を跳ね返す。

　猿は空中を回転し、とんっと軽い音をたてて紅色の屋根につま先で着地した。

　今まで拮抗していたように思われた張り合いであったが、猿の方が実は上手だったらしい。

　着地した猿は全く息が上がっていないのに対し、警察の男は余裕がない、といった感じだ。今にも湯気が立ちそうに熱を帯びている。

「お前……、腕を上げたなぁ？出鱈目に強くなってやがる」

　警察の男は息を肩で整え、冷静を装って背筋を伸ばした。

　見据えた先にはまだ自分より随分と余力のある猿が精悍な顔つきで立っている。

「こっちは椅子に座ってする業務も、なんもねーからな。一日中喧嘩する時だってあるんだ。

　お前さんより、――あの時の自分よりは格段に強くなっているはずだが？」

「ほーお？俺は出鱈目に、と言ったんだ。その意味を吐き間違えているようだな」

「隙だらけの技って言いてぇのか？その隙さえもつけていないようだがな」

「はっ……」

　警察官の男は苦く笑った。何も言い返せない、劣勢に置かれている、というような状況である。

　男はここで話題を転換することにした。

「お前、今度は誰の下につくんだ？

　獣だったものは神の力を持つ者……仏様に仕え、その恩恵を受けなければ再び獣になってしまう。

　お前はただの猿にはなりたくねぇ、だろ？次は誰に仕えるんだ」