Caf'e :customer ページ12
いつものカフェ。
いつもの席。
全面がガラス張りの店内は、日差しのよく入る暖かな空間。
座席のテーブルの高さから1メートルくらいの幅で洒落たモザイクがかかってるから、座っている客の顔は見えない。
これも店主の気遣いなのか。
店内に人がいるかどうかだけは確認できるから。
平日の半端な時間、人がいないときにここに入り浸るのが日課。
空調が直に当たらなくても適温を保つこの席は、俺の特等席だ。
そこで過ごす時間はのんびり台本を読んだり、歌詞を書いたり。
柔らかな日差しの中で、俺が誰なのか分かっても店員と客という一線を越えず、適度な距離感と優しい声をくれる彼女に癒しを感じる。
「今日はタクシーで帰るよ。」
マネージャーにそう伝えていつもの寄り道。
この日も昼過ぎ、ドラマの顔合わせを終えて1人でカフェに向かう。
よし。
店内は誰もいなさそうだな。
「いらっしゃいませ。」
カランカランとレトロなドアベルの音を鳴らせば、まだまだ冷たい春風から逃れるこの場所で、木漏れ日のようにふわりと微笑む彼女。
ここの女主人。
俺がこの店に通う、もうひとつの理由。
1人で店を切り盛りしているようで、他にスタッフを見たことはない。
「どうぞ。」
そう言う彼女にはわざと目もくれず、アメリカーノをホットでと頼み、慣れた席へつく。
彼女が淹れるコーヒーは、いたって普通。
絶品ってわけじゃない。
だけどこの雰囲気と彼女が。
常に他人の視線を意識して生きる喧騒の中で、唯一自分に戻れる場所。
俺に構うでもなく、様子を伺うでもなく。
グラスをピカピカになるまで丁寧に磨いたり、俯いて書き物をしてる姿。
キュッと蛇口を締める音。
午前中に手作りしているのか、店内はクッキーの焼けたあとの香ばしい香りとコーヒーの匂い。
いつも台本の隙間から横目で彼女を盗み見てるのは俺の方。
いつものように台本を読んでいると、これまで気配を消していた彼女が今日に限って。
「おかわりはいかがですか？」
驚いた。
それが単なるサービスだとしても、初めて目が合った気がしたから。
「あ。まだよろしいですか？」と呟いた後、一礼してキッチンに戻ろうとする彼女を引き止めた。
「いただきます。」
それから数時間。
帰りにこれから向かう店のショップカードを差し出した。
外に出れば扉の前には“CLOSE”の文字。
いつもこれを下げてくれてたのか。
ここが俺たちの始まりの場所。
Caf'e. Fin..
Sunset Glow :boy→←Caf'e :waitress
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めい(プロフ) - 莉緒さん» 莉緒さん、初めまして。コメントありがとうございます。そう言っていただけるととても嬉しいです。こちらの短編集はお陰様で完結しましたが、これからも作品を作れたらと考えておりますので、よかったらそちらにも遊びにいらしてくださいね。 (2017年4月28日 1時) (
レス) id: 362d41b39c (このIDを非表示/違反報告)
莉緒(プロフ) - いつも胸がキュンキュンするお話で、とても楽しいです。 (2017年4月28日 0時) (レス) id: 25146adc40 (このIDを非表示/違反報告)
めい(プロフ) - まいこさん» まいこさん、こんにちは。ありがとうございます。あたし自身も、My heavenは特にお気に入りのお話なので、まいこさんにも気に入っていただけて嬉しいです。よかったらもう少しだけお付き合いください。 (2017年4月21日 17時) (レス) id: 362d41b39c (このIDを非表示/違反報告)
まいこ(プロフ) - My heaven最高です！どれも素敵な話ばかりで毎回楽しみです！！ (2017年4月21日 17時) (レス) id: baec6281f0 (このIDを非表示/違反報告)
めい(プロフ) - fdr63dgaさん» fde63dgaさん、こんばんは。コメントありがとうございます。こちらこそいつも読んで頂きありがとうございます。今後も頑張ります！ (2017年4月12日 22時) (レス) id: 362d41b39c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：めい
| 作成日時：2017年3月22日 1時
