東碕真琴(とうざきまこと) ページ2
「さぁ、血を吸うんだ」
父は目の前に鎖で繋がれた少女のうなじを差し出す。
少女は喋ることができないように口枷をつけられて、手足に鎖をつなげられていた。少女の目には涙が浮んでいた。その瞳からは恐怖が伝わってくる。
「……僕には無理だよ」
父はその言葉を聞いて、今度は僕の頭を抑えつけて少女のうなじに近づける。無理やり血を吸うことを強制してくる。
「大丈夫だ。うなじを噛んで血を飲み込むだけの簡単な作業だ。このくらいできなくてどうするんだ？これ以上恥をかかせるでない」
そう言うと抑えつけられている手にさらに力が籠る。圧倒的な力の前で抵抗できるはずもなく、僕はねじ伏せられた。
何回やっても無駄だと分かっているのに…。
そう思いながらも、僕は覚悟を決めて少女のうなじを噛んだ。柔らかい皮膚にゆっくりと牙が入っていく。
少女は「ゔ！！」と、うめき声をあげて体を震わせた。少女のうなじから赤い血が溢れ出る。僕は少しずつその血を吸いあげ、血を口に含む。その瞬間、口の中にドロっとした鉄の味が広がった。ドロドロとした舌触りと血の風味に耐えきれなくなる。僕は少女のうなじから牙を離すとたまらずその場で吐き出した。
「ゲホッ！ゲホッ！！」
人の肌を噛む感触、牙が肌に穴をあける感触、血が口の中に流れてくる感触、思い出すと気持ち悪くなり、胃が痙攣しはじめる。
父はそんなうずくまった僕を見て
「……………何故だ」
そう呟くと、少女の髪を鷲掴みし、持ち上げて首筋に牙を立てた
「ん〜！！」
少女は足をバタバタして抵抗するが、逃れられるはずもなく数秒で少女は動かなくなった。
父は持っていた少女をその場に投げ捨てると、大声で怒鳴りつけた。
「何故！こんな簡単な事もできぬのだ！！…この出来損ないが！！」
僕は胸ぐらを掴まれたとおもったらそのまま地面に叩きつけられる。
「ぐはっ！！」
背中に激しい痛みが走り、口から血が吹き出る。
動けなくなった僕に父は軽蔑の目を向け、去っていった。
「…………出来損ない、か」
吸血鬼のくせに血を吸うことができず、体が拒絶し、再生能力も低く、身体能力も人間とさして変わらない。
……確かに出来損ないだな。思わず、笑いが出る。それと同時に一粒の涙が溢れ落ちる。
いつもそうだ。結果はいつも僕にとって絶滅でしかない。
だって……この僕、東碕真琴はどこまでも無力なのだから。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 17人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
奏音♪(プロフ) - seijakariさん» アカウント変えたのでよろしく！！そしてTwitterも始めました！！小説頑張ってね！！ (2020年2月15日 23時) (
レス) id: 8c92be2f2c (このIDを非表示/違反報告)
seijakari(プロフ) - 冬神黒花さん» コメントありがとうございます 参考にして考えてみます (2019年12月22日 18時) (レス) id: 241541f10b (このIDを非表示/違反報告)
冬神黒花 - ヴァンパイア（吸血鬼）…格好いいですよね！主人公の名前を変えられる様にしても良いかもしれませんよ！上から目線がスミマセン！ (2019年12月22日 15時) (レス) id: d6d929f7e2 (このIDを非表示/違反報告)
正邪仮 - ありがとうございます！ (2019年6月21日 11時) (レス) id: 1884bddac7 (このIDを非表示/違反報告)
奏音♪(プロフ) - 正邪仮さん» 私にも手伝える事があるなら言ってね！ (2019年6月20日 17時) (レス) id: ac6889db09 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：seijakari | 作者ホームページ：http://uratuku/seijakari
作成日時：2018年5月21日 13時
