劣等ヴァンパイア

プロローグ ページ1

『努力は必ず報われる』

そんな言葉に僕は何回騙されてきたのだろう。叶わぬ希望を抱いて、未来の自分に夢を見て、僕はずっと努力してきた。今まで精一杯頑張ってきた。

…だが、どんなに頑張ってもどんなに願っても結果に裏切られ続けた。そのたびに僕は『頑張っている 努力している なんとかなる』そう自分に言い聞かせた。

でも、最後は失敗に終わる。そしてまた無駄な努力をする。その繰り返しなんだ。
僕はなにも見えていなかった。見ようとしていなかった。理想だけを追いかけ、現実を否定した。

「次は上手くいく」「大丈夫」「いつか出来るようになる」
何度も僕は周りから励まされ続けた。

「期待している」「頑張って」
何度もそんな辛い言葉をかけられた。

だが時間が経つにつれ、その励ましは軽蔑、侮辱、差別へと変わっていった。
励ましてくれていた奴もみんな僕を見下すようになった。

最初は親からや周りからも期待を寄せられていたが失敗を繰り返すうちに周りだけでなく親からも相手にされなくなった。
僕を残してみんな去っていく。僕には何も残らなかった。

(全然足りない)何度も頑張った。(何が悪いんだ)何度も考えた。

(どうして僕だけが...)何度も嘆いた。(...普通になりたい)何度も願った。

この世に才能があるのなら僕はその真逆だ。普通になれない落ちぶれた存在。それが僕。

何をしても絶対に越えられない壁があると僕は知った。



この世界には人と吸血鬼の二つの種族が存在する。

吸血鬼(ヴァンパイア)とは命の源である血を吸い、栄養源にする。不死と言われるほどに治癒力が高く、人間にとって致命傷な傷でも栄養源である血を吸えば完璧に再生する。身体能力も人間よりはるかに高く、夜行性で時折人間を攫ってくる。人間は子供が悪い事をしたら「吸血鬼に攫われるよ…」と言い聞かせたりするらしい。

これは…そんな吸血鬼に生まれた無力で無価値の僕、孤独のヴァンパイアの物語だ。

東碕真琴(とうざきまこと)→

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