五十一 ページ5
あ、消されてる。
日時計は足で蹴散らされたように消えていた。恐らく犯人を知っている私は、その露骨さを少し笑ってしまった。
『小松田さん、おはようございます』
小「おはよう、りりこちゃん」
なに見てたの?と聞かれたけど、アリの巣がある気がして見ていました。と適当な答えを言ってごまかした。
二人で事務室に行き、吉野先生に挨拶をしてから本日の業務を開始した。
吉「今日の分の仕分ける手紙はこれです」
小「うっひゃ、多いですね〜」
『どう仕分ければいいですか?』
吉「学園長先生宛ての物と、先生たち宛ての物でひとまずは分けてください。それ以外は委員会宛てや生徒の保護者からでしょうから、それはひとまとめにしていてかまいません」
『分かりました』
小松田さんは早速頭がちんぷんかんぷんになりかけている。
でも、なんとか立て直して仕事をすることに成功。
小「お城からが多いですね」
吉「近く、戦が始まるという噂もありますからね」
小「そうなんですかぁ〜」
世間話には極力入らないようにしよう。何か企てているなんて余計に疑われたら面倒だ。
知らぬ存ぜぬの顔をし通していた。吉野先生には、その思惑は読み取られていたと思うけれど。
しかし、私のそれは思いがけず小松田さんに打ち破られた。
小「にしても、どうして戦なんかするんですかねぇ。痛いし悲しい気分になるだけなのに」
という呟きに、ぴたりと仕事の手を止めてしまった。
二人は私の方を見つめた。
『…人類の歴史の中で、地上から争いが無くなった日は1日も無いそうですよ。
平和を、ただ願う人も、愛する人も、何かしらの武器は持ってしまうんでしょうね』
吉「皆、武器を持っているんですか?」
『言葉は、一番の武器じゃないですか』
吉野先生は、私の目を見つめた。
『…愛ゆえに、ですよ』
逃げるようにそう言って作業に戻ったけれど、私はその答えこそが本当は本当に答えなんじゃないのかな、と思っていた。
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Ashlee(プロフ) - 続きが速く見たいです (2022年5月1日 15時) (レス) @page11 id: 730adcd2c0 (このIDを非表示/違反報告)
秋冬(プロフ) - えッッッ途中で終わり…なんですか…。とてもいい作品で面白かったです! (2021年9月25日 9時) (レス) id: 1ebc893394 (このIDを非表示/違反報告)
947(プロフ) - すっごく面白いです!これからも頑張ってください! (2020年3月26日 2時) (レス) id: ef0a8212f8 (このIDを非表示/違反報告)
まる(プロフ) - まるごとぶどうさん» ありがとうございます!楽しんでいただけるよう更新頑張ります! (2019年8月7日 6時) (レス) id: 3f7caaff83 (このIDを非表示/違反報告)
まるごとぶどう - 続編おめでとうございます! 前作から楽しく拝見させてもらっています。これからどんな風になるのか楽しみにしています!無理せずがんばってください! (2019年8月6日 18時) (レス) id: 188b9ce26d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まる | 作成日時:2019年8月5日 23時