五十 ページ4
綾部
頭がいっぱいになり吹っ切れたのか、ぼんやりとした心地のままに四年長屋に戻ると、ちょうどいいタイミングで
滝「あっ、いた!喜八郎!お前そろそろ朝食を食べないと遅刻するぞ!」
滝夜叉丸が部屋から飛び出てきた。
泥だらけだなんだと言いながら、せっせと手ぬぐいを濡らしてくれる滝夜叉丸に
綾「…ねぇ滝、どうして僕は穴を掘るんだろうね。どうして滝夜叉丸は、戦輪が好きなの?」
と、ど直球すぎる質問をした。
滝夜叉丸ならペラペラと答えてくれるかな、と思ったけれど、手ぬぐいを絞る手をぴたりと止めて考え込んでしまった。
滝「うむ…どうしてと聞かれるとやはり私の美しさを引き立たせるには戦輪がいちばんで」
あ、やっぱりさっきの疑問はウソ。ペラペラ話し始めたや。
はいはいと聞き流していたかと思うと、次は引きずられるようにして食堂に連れていかれた。
朝食のお盆を受け取り、席に着くと、滝夜叉丸は思い出したかのように話し始めた。
滝「さっきどうしてそんなこと聞いてきたんだ?」
綾「何が」
滝「だから、どうして喜八郎が穴を掘るかなんて質問だ。そんなの、普段のお前なら迷うことないだろう」
僕は、滝夜叉丸の中の常識をひとつ壊しかけてしまったらしい。
ふむ、と今度は僕が頭を抱える番だ。
正直に言えば、滝夜叉丸は天女の首をスパッとやりに行くだろうし、正直に言わなくてもお節介焼きの滝夜叉丸の事だから、穴掘りに行かないで休めと言ってくるかもしれない。
綾「…心に、穴が開いたんだ」
今の僕には、それが精一杯の答えだった。
初めて僕が開けられた穴。
93人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Ashlee(プロフ) - 続きが速く見たいです (2022年5月1日 15時) (レス) @page11 id: 730adcd2c0 (このIDを非表示/違反報告)
秋冬(プロフ) - えッッッ途中で終わり…なんですか…。とてもいい作品で面白かったです! (2021年9月25日 9時) (レス) id: 1ebc893394 (このIDを非表示/違反報告)
947(プロフ) - すっごく面白いです!これからも頑張ってください! (2020年3月26日 2時) (レス) id: ef0a8212f8 (このIDを非表示/違反報告)
まる(プロフ) - まるごとぶどうさん» ありがとうございます!楽しんでいただけるよう更新頑張ります! (2019年8月7日 6時) (レス) id: 3f7caaff83 (このIDを非表示/違反報告)
まるごとぶどう - 続編おめでとうございます! 前作から楽しく拝見させてもらっています。これからどんな風になるのか楽しみにしています!無理せずがんばってください! (2019年8月6日 18時) (レス) id: 188b9ce26d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:まる | 作成日時:2019年8月5日 23時