君がいなくなる前に 第二幕

四十九 ページ3

綾部


それからほんの少しして、天女は満足そうに影を追うようにして出来た印と太陽を見上げると、すたすたと歩き去っていってしまった。

遅刻しないでくださね、と至って普通に声をかけられたけど、僕は返事をしなかった。




綾「…むかつくな」



天女と言う存在は憎い。消し去りたい。
その感情しか抱いてこなかった。しかしどうだろう。
あの天女には、そんな感情を一切抱けない。こっちがどんなに歯ぎしりして睨みつけても、あの天女はそれを心地の良いそよ風のように受け流して見送るのだろう。

それが本能的に分かってしまう。だからむかつく。




イライラして、せっかくの穴を掘る気も失せてしまった。朝ごはんを食べにいかないといけないから戻ろう。また滝夜叉丸にどやされる。



回れ右をして歩き出そうとしたけど、戻って、天女が作っていた日時計の印を足で散らして消した。


でも、それが今僕にできる反抗の精一杯だと言うことが分かって、よりイライラしただけだった。

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