検索窓
今日:3 hit、昨日:5 hit、合計:133,498 hit

ページ2

とぷん、たぷん。
音が聞こえる
ここは何処だろうか
回りは液体、自分が水中にいることを自覚した瞬間に焦りが訪れる。しかし、予想していた息苦しさは無くむしろ心地のよい。眠気すら覚える心地よさだが、私はまだ自我を保っていた
正気であるということは自分が何者であるか理解し思考することである

「どこ、ここ…神様。私、どこに連れてこられたんですか」

何故泣きそうな笑顔で見送られたのか

「ここに何があるの?」

とにかく、止まるわけにはいかない
私はそう思い泳ぐようにこの液体の終わりを探す。物理法則が当てはまるなら上に行けばいい
上に手を伸ばして懸命に泳ぐ

「壁?」

赤い壁、ふと意識して見れば景色はずっと赤いおそらく壁の色がそうさせているのだろう
しかし、困ったことに上まで来たのに全く出口が見つからない、物理のない空間だろうか?それなら暫く漂ってこの終わりを探そう
長くかかってもいい、冷静に。
妙に思考はクリアで私は泣くでも怒るでもない穏やかな、安らかな思考さえできた

しかし、泳いでみてわかった事実に少しだけ焦りを覚える

どうやら楕円のような容器に閉じ込められているようだ、人工物にしてはどうも歪で想像できる形がない、そして出口もない。そして、もう1つわかったことがある

「これ、なんだろう」

腰に巻き付いた何かは私の体に直接繋がっている、一応辿ってみればこれは壁の一部に繋がっているようで何かあるとしたらここだろう

引き抜いてみようか?

「うーん、何かダメな気がするんだよね」

引き抜いたらこの穏やかな空間が壊れてしまう気がした、破壊して出てもいいけれど。この空間は壊して仕舞うには余りにも心地が良かった

「…眠い」

一度眠って起きたらその時に考えよう
それがいい…それがいいかもしれない。
眠いときは何も考えられない、思い付いたとしても良いものではない。

それは私が人間性を失う前から知っていたこと

なら寝てしまおう、暖かなこの場所で
安らかなこの空間で…
何処からか子守唄さえ聞こえてきたような気さえしてしまう。
懐かしい旋律、ついつい頬が緩み笑顔になってしまう。
幸せだ、私はこの上なく幸せだ
生まれた瞬間からきっと私は幸せなんだろう
生まれる前から私は幸せなんだろう
過酷な運命も人生を狂わせる出会いも
辛い人間関係や苦しいしがらみも一切無縁な

たった一人の私に生まれるのだから

『Aちゃん、出て来て。お願いやから』

まだ、眠らせて

193,死者の檻→←設定



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (344 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
592人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

りと - 一気に全部読んでしまいました…世界観の複雑さに何度か頭を悩ませましたが、色々考察出来て楽しかったです!天使、悪魔、人間、そして神…いずれも人間という概念に縛られて自分を見失いながら生きて(?)いる…。え、これ無料で読んで良かったん…?お金払わせてェ! (5月31日 0時) (レス) @page42 id: 3c068a4e58 (このIDを非表示/違反報告)
1103(プロフ) - とても楽しく拝読させていただきました。ありがとうございます! (2022年9月23日 1時) (レス) @page42 id: d3023c1d20 (このIDを非表示/違反報告)
夜空音 - ランキングにはのってないね!!うん!!でも続編かきたいね!!勘違いやわ!! (2020年3月9日 2時) (レス) id: 8b85c6a757 (このIDを非表示/違反報告)
夜空音 - ありがたい事に、この話。未だランキング乗り続けているんですよね…シリーズ全体的に。いつか、続編というか、主人公ちゃんが人外になってからの話を書くのも、いいかもしれませんね (2020年3月9日 2時) (レス) id: 8b85c6a757 (このIDを非表示/違反報告)
夜空音 - ちゃっかり新シリーズ出てますので、よろしければご贔屓に… (2019年10月6日 18時) (レス) id: da4b35a571 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:夜空音 | 作成日時:2018年10月12日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。