満月 ＿BakareA

Rain ページ28

(雨)




その日は、梅雨の始まりの日だった。






貴「久しぶりの雨だな〜。」







移動教室だったため。



自分の教室に戻ろうと歩いていると。









校門に。



雨の中、人が立っていた。




傘もさしていない。








誰だろう、と思って。



よく、見てみると。








私は判断するなり、



勢いよく、外に走り出した。





・









・






貴「ルイスくんっ。」







彼の腕を引っ張ると。





虚ろな目で私を捉える。







ル「…‥A。」







ぽつりと。


私の名前を呟く。







貴「だめっ、ほら風邪引いちゃう。

　 早く、戻るよっ。」






私はルイスくんの腕を引いて。



雨の中、走った。









昇降口に、やっと着いた。




ポケットからハンカチを取り出し。




俯く彼を拭く。






　「あれ、A？」






後ろから友達の声が。






貴「あ、ちょうどよかった。

　 私、授業遅れるって言ってもらえる？」




　「うん了解。」






そのまま去っていく。




私もルイスくんに向き直り。




頬を拭いてると。








貴「……っ。」









ぎゅっと。



力強く、抱きしめられる。









雨に濡れ。


冷え切った身体が温まる。








だ、

誰かに見られちゃうかも。







そう思っても。





彼の顔を見てしまったら。





何も言えない。








ル「ね、






　 抜け出そう。」









不意に放たれた言葉を理解する前に。





ルイスくんは私を離して。



手を握り。





側にあった傘を取って。









歩き出す。









私を連れていく。









雨の中。

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