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何の反応もないAさんに、急に恥ずかしくなってパッと離れた。
誤魔化すようにドアを閉めて発進してもらった。
Aさんの家から俺の自宅までは車で15分ほど。
意外と近いはずなんだけど、その15分が永遠に感じるほど気まずい車内。
なのにこの時間も、肩が触れる程近い2人の距離ももどかしくて、それさえも惜しくて無駄に苛立った。
俺の家に向かう道中で彼女が沈黙を破った。
A「あれ？事務所は反対じゃないですか？」
事務所？
タプ「俺の家に向かってますよ？」
A「えっ！？」
タプ「だって事務所から来ましたから。向かう先は自宅です。」
俺の当たり前が通用しなかったのか
A「打ち合わせのはずでは？？」
タプ「はい。打ち合わせしますよ。俺んちで。言いませんでした？」
大きな目をパチクリさせてる彼女は聞いてないって訴えるように首を振った。
タプ「息が詰まるんです。事務所。」
本当は1日の半分以上を過ごす場所なんだから自宅みたいなもんだけど、正直関係者以外は立ち入り禁止だ。
だけど何となく言いたくなかった“部外者”って言葉。
それが妥当な単語だってもちろんわかってる。
でも壁を作るみたいで言いたくなかったから適当な言い訳をした。
いつも通り地下駐車場に入ってもらって、そこから自宅にあがる。
玄関に踏み入る時、借りてきた猫みたいに縮こまってる彼女。
タプ「何度も来てるんだから遠慮しないでください。笑」
A「何度来ても緊張しちゃいます。」
恥ずかしそうに笑う彼女を見て、おきまりの半分本気の冗談。
タプ「そんな可愛いこと言ってるとまた抱きしめますよ？笑」
A「全っ然緊張してません！！！」
タプ「半分冗談です。そんなに全力で否定されると傷つくなー。笑」
そう言ってからかうと、本気にしてあわあわする彼女が可愛くて仕方ない。
まだ続く廊下の途中で振り返って、
「だけど半分以上は本気です。」
廊下の壁にやんわりと彼女を追い込んだ。
タプ「だから嫌がらないでください。」
そう言って返事を待たずにそっと抱き寄せた。
「やっと会えた。」
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作者名：めい
| 作成日時：2016年6月24日 3時
