TOP ページ15
手際よく進められる料理を、餌を待つ子犬みたいに付きまとって見てた。
何を作ってるのか聞きたい。
いや、途中で当ててやる。
いやいや、出来上がるまでのお楽しみにしよう。
ずっとそれを脳内ループしながら見てたら、顔をピンク色に染めた彼女から落ち着かなそうな一言。
邪魔でもないし、気になるってどういう事だろう？
期待していいのか？
いや待て早まるな。
久しぶりの感情が暴走しそうになるのを必死で抑制した。
部屋が綺麗だと褒められて、掃除したのは自分じゃないのに自慢気だった。
入念にやるようにお願いした甲斐があったな。うん。
おばさんもきっと喜ぶよ。
俺も料理が出来れば色々手伝って2人ではしゃげるのになー。
冷蔵庫から物を取り出すのだって見てるだけ。
普段は酒と水しか入ってない冷蔵庫が、食材でいっぱいになってる。
こんなのヌナの家か子供の頃の実家でしか見てない。
それだけであったかい気持ちになった。
料理が出来あがったのか、今度は皿を探し始めるAさん。
A「TOPさん、深い器ありますか？」
タプ「あぁ、こっちの食器棚です。」
A「ありがとうございます。あ、これちょうどいい。」
彼女が取ろうとした食器は少し高い位置にあって。
その上に重ねてあった小鉢が見えなかったらしい。
器を傾けて引いた時、小鉢がグラつくのが見えた。
タプ「おっ。危ない。」
中の小鉢を支えたんだけど…
彼女を後ろから抱くように…な訳なくて、彼女の左斜め後ろから片手で済む程度の事だったんだけど、
俺の陰で視界が薄暗くなった彼女が、ありがとうございますって振り向いた時に、俺の顎に頭突きするかと思うくらい近かったんだ。
A「こっちの方が危なかった。笑」
ごめんなさいっていたずらっぽく笑いながら謝る彼女からそっと皿をとって渡す為に距離を戻した。
今うるさいのは彼女の心音か？それとも俺か？
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作者名：めい
| 作成日時：2016年6月24日 3時
