十九 ページ19
『鶴丸さん…』
「だったら俺に酌してくれないか？」
『わかりました』
「君は主のことどう思ってるんだ？」
『はい？』
「主に恋仲といえるやつができたことさ」
『…大変、喜ばしいことです』
「にしては随分な顔だな」
『そうですか？』
「ああ、今に祟神にでもなりそうだぜ」
『祟神なんて…冗談もほどほどにしてくださいよ』
「ハッハッハ、悪い悪い。驚いたか？」
『驚きにすれば何事もいいわけではありませんよ』
「おやおや、怒られちまった。
俺は、主に恋仲といえるやつができて嬉しいぜ。
人ってのは、誰かと繋がっていく。
点と点が繋がって線となり、そこから新しきものへと繋がれていく。
俺達がいられるのも、その線が繋がったから」
『………僕には、わかりません』
「…そうか」
『僕の前の主君も、その線で繋がっているのはわかります。
ただ、怖いのです』
「怖い？」
『はい。
僕は、前田家に献上されてから焼失されたり、他の家へ献上されることはありませんでした。
だから、僕を大事にしてくださった主君が、どんどん去っていくのが辛かったのです。
人の命は短い、それはわかってます。
でも、期待しては、置いてかれて…
今の主君……A様も、いつか、離れて…』
クシャッと頭を撫でられた。
『な、何ですか鶴丸さん！？』
「確かに主のそばから離されるのは辛いさ」
『――っ！！も、申し訳ありません、僕なんか、贅沢なのにっ』
「いや、構わないさ。寧ろありがたかったぜ」
『へ？』
「君も俺の主のことは知ってるだろ。
鬼女紅葉伝説で有名な余五将軍の平維茂から秋田城介へ。
安達貞泰のもとに渡ったが霜月騒動で北条貞時によって墓から暴かれた。
時代がたち、織田信長のもとへ行ったと思ったら御牧勘兵衛景則へ。
気づいたら伏見藤森神社にいた。
神社だし、もう出ることはないだろうと思ったが、伊達家へ送られ、最後は明治天皇へと。
随分疲れるもんだ」
『…』
「正直、他の刀が羨ましかった。
前田の他に兼定派の槍、人間無骨も、代々仕えていられた。
俺は好きで墓から暴かれた訳でも、神社にいたわけでもない。
出来ることなら、ずっとそばにいたかった。
何で俺だったんだ」
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猫尾ちゃん(プロフ) - 私、前のアカウント？でもこの作品を読ませていただき、大号泣したのに、今回また読ませていただいて、また大号泣してしまいました…笑 ほんとに、とっっっても素敵な作品です！ありがとうございます！！…再会のとことか前田の怒りシーンとかもう…っ！！ (2019年4月6日 14時) (
レス) id: 757e983766 (このIDを非表示/違反報告)
とりあえずカエルで@暫くこれません(プロフ) - 月猫さん» ありがとうございます！さいごには皆ハッピーエンドむかることができましたね(*´ω｀*) (2017年2月15日 16時) (レス) id: 967cdb4cb9 (このIDを非表示/違反報告)
月猫 - とても感動しました！！！目から涙が止まりません。。。加州にも前田にも会えてよかったです(´∀｀*) (2017年2月15日 16時) (レス) id: 83d99a2662 (このIDを非表示/違反報告)
とりあえずカエルで@暫くこれません(プロフ) - エテさん» こちらこそありがとうございます。涙を流されるほどこの作品をしっかり読んでいただけたことを聞け、作者として嬉しいです。 (2017年2月13日 10時) (レス) id: 967cdb4cb9 (このIDを非表示/違反報告)
エテ - とってもいい話でした！ もう、最後の方は泣きながら読んでました。すごい感動させていただきました。ありがとうございます。 (2017年2月13日 0時) (レス) id: c4a0caabe1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：とりあえずカエルで x他1人 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/blackfrog/
作成日時：2016年11月3日 20時
