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それは5年前の7月下旬、Aが14歳の頃の話


『ねぇ、北の方って寒いの?この格好だったら風邪引いちゃうかな。』


私の格好はグレーのシャツに黒のレザースカート。膝丈のスカートだと寒いと思ったので靴はロングブーツを履いている。


「うーん、寒すぎることはないだろうけどAにとっては寒いかもね。ここは南の方だから他より暖かいもの。その格好だと心配かもしれないわ。」


『でも私暖かい上着なんてパーカーくらいしか持ってないよ。お母さんの上着を貸してくれない?』


「そしたらお母さんが風邪引いちゃうでしょー。」


少し待ってなさいと母が言った後、母は車のトランクから何やら袋を取り出した。

袋の中には黒いブルゾンが入っていた。首元には明るすぎない白色のもこもことした何かがついており、素材もとても暖かそうなものであった。

実際に着てみると少し大きいサイズだったが着る分に困ることはなかった。


「はい。今日の為に前々からオーダーメイドで作って貰ってたのよ。少し大きいみたいだけど、長く使えると思って許してね。これからAが大きくなってこれが小さくなったら次は一緒につくりましょう。」


『そうだね。今着てみると凄い暑いけど北の国ではこれを着ても寒いのかなぁ。折角の旅行だし風邪引かないように気をつけよう。』


向かうところはユアの村からおよそ600kmほど離れた山の上に立つ国。その日はいつもよりわくわくしていた。

初めて行く地方という事もわくわくの要因だったのかもしれないが。

1番の要因は、久しぶりに父も一緒に旅行に行けることだった。

いつも仕事で週に1回帰れたら良い方であった、工場長の父。顔を合わせることすらあまり叶わなかったが、今回はたまたま5日間の休みを取れたとかなんとか。

父も一緒の旅行だなんて何年ぶりだろう。話を聞いてからずっと胸が高鳴っており今日の旅行は本当に本当に楽しみにしていた為か、ずっと笑顔で友達に気味悪がられた程だった。


「おお、それが母さんに貰った上着か。良く似合ってるぞ。流石俺と母さんの子だな。」


『それって自画自賛みたいなものじゃない?でも、ありがとう!』


そう言って父と一緒に笑い合った。無表情でいると少し怖いが笑うと優しいである。性格も、当時の工場長には珍しく温厚で従業員がとても慕っていることが良く分かった。


幸せだった。とてもとても。


「そろそろ出発するから車に乗ってくれ。忘れ物がないか確認しろよ。」

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未雨(プロフ) - エモンガさん» コメントありがとうございます。頑張って更新ペース上げてくのでこれからもよろしくお願いします! (2023年2月26日 23時) (レス) id: 490941137f (このIDを非表示/違反報告)
エモンガ - 初コメ失礼します!応援してます!投稿も頑張ってください! (2023年2月25日 17時) (レス) @page30 id: b3274f6834 (このIDを非表示/違反報告)
未雨(プロフ) - 天天さん» コメントありがとうございます。是非是非夢主ちゃん描いてあげて下さい!これからもよろしくお願いします! (2023年2月15日 23時) (レス) id: 490941137f (このIDを非表示/違反報告)
天天(プロフ) - 未雨さんの書き方大好きです〜!夢主ちゃんの瞳の色も気になるところ!!良ければ描かせてもらってもよろしいでしょうか…? (2023年2月15日 18時) (レス) @page21 id: bc837922a0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:未雨 | 作成日時:2023年1月24日 23時

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