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「…さ！もうそろそろご飯を食べましょ！ルカには、そうね…ラッキー。食事を持って行ってあげて。」
「うん。わかったよ。いつ持っていけばいい？」
医師からラッキーと呼ばれる彼は、男性サバイバーの１人で幸運児という職業だった。
彼に名前はなく、周りからは幸運児であることからラッキーという愛称で呼ばれている。
中にはそのまま幸運児と呼ぶ人もいるが。
そんな彼は優しく穏やかな性格をしており、他のサバイバー達よりは個性が薄い。
もはや無いと言い切ったほうがいいのではないかと思うほどだ。
彼は静かに食堂を出て、「囚人」の部屋へ食事を持って行った。
夜も更けて、時間は深夜の２時と行ったところだろうか。
２階のベランダに、１人の女性が景色を眺めていた。
特別綺麗な景色とも言い難く、唯一綺麗だと感じたのは月だけだった。
月を見ている今の彼女はとても儚く、手を伸ばさない限り彼女の生を鮮明に理解することはできないだろう。
「…なあ。」
そう。彼のように。
月を見ている彼女の手を掴んだのは、ナワーブ・サベダーという傭兵の職業を持つサバイバーだった。
「…どうしたんだ？」
手を掴まれても何も言葉を発しないことを不思議に思ったのか、傭兵は彼女の手を引いて、ベランダから室内へ戻らせた。
「…」
なんでもないとでも言いたげな顔に、思わず傭兵は手を離してしまった。
「…」
彼女は傭兵にお辞儀をすると、足音を立てずに傭兵の横を通り過ぎた。
「なんだ、アイツ…」
そう呟いた彼の不安が現実にならないことを、私達は祈るだけだ。
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作者名：幽霊海月 | 作成日時：2023年1月31日 0時
