きみと口ずさむ歌 (ページ23)

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♪.・＊Issei ページ23

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「♪〜…」

何の曲？

そんなどうでもいい質問すらできず

気になる君が口ずさむ、曲の名前も知れないまま

今日俺たちは高校を卒業してしまった

恋に落ちることに理由なんてない

同じクラスで、

いつも控えめ

髪はサラサラなロングで

絵を描くのが得意な君。

対して俺は野球部で、

クラスの中心

いつも友達と悪ふざけして先生に怒られる

俺が一目惚れした君は、

俺とはまるで対極を生きているようだった

君のことを考えると

まるで自分じゃないみたいな気持ちになる

だから、

話しかけるなんてできず

ただ君を目で追うばかりの日々だった

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そんな君と初めて話せたのは

冬休みに入る前。

教室に忘れ物をしたことに気づき

補習終わりに教室に戻った日のこと

ガラ…と教室のドアを開けると

「…あれ、豆原くん」

彼女が教室で勉強をしていた。

一「お疲れ、様」

「豆原くんも」

一「いつも、こんな時間まで？」

「うん、もうすぐ試験だからね」

一「…俺も、ちょっと残ってここで勉強しようかなって」

「そっか、頑張ろうね受験」

他に別に何を話すわけでもない

…けど、何だかまだ同じ空間にいたくて。

適当に理由をつけて

俺はいつもしない居残り勉強をすることにした

俺の斜め前に座る彼女は、イヤホンで音楽を聴いていて

時々軽く口ずさみながらペンを動かしていた

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「じゃあ、私そろそろ帰るね」

支度をして教室を出ようとする彼女を

一「、待って」

…思わず呼び止めた

「？」

一「あ、その…

じゃあね」

「ふふっ、何だそれだけ？(笑)」

変なの、と笑いながら

彼女はじゃあねと手を振って教室を出て行った

情けないことに、

これが卒業前最後の会話だった

あの時呼び止めた彼女に

「さっき…何の曲聴いてたの？」

このどうでもいい一言すら、言えず。

あの時、聞けていたら

何か変わっていただろうか？

心がキュッと苦しい思いをしたまま、

俺の初恋は終わった

だからあえて

俺は、このまま曲の名前は知らないままでいることにした

君の鼻歌を頼りに

初恋の君のことを思い出せるから。

そしたらまた君に、

会えるような気がするから。

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