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「 どうしてっ 」
『 ここの景色、綺麗だよね 』
「 そうじゃなくて、」
『 久しぶりだね 』
噛み合わない答え
それを発する、待ち望んだ声
彼が ______ 優斗さんが、そこにいる
「 わたし、ずっと探してました、優斗さんのこと、 」
『 それは、どういう意味? 』
「 あの日、突然帰っちゃうから、」
会ったら言おうと決めていたことはたくさんある
誤解を解いて、ごめんなさいって謝って
優斗さんのこともっと聞いて
なのに、彼を前にしたら何も出てこない
夕陽の、最後のひと欠片が沈みきった
『 残念 』
「 え、? 」
『 夕陽が沈み切ったから、タイムアップ 』
「 何がですか、」
気が付いたら、身体は温もりに包まれていた
「 っ、優斗さん、」
『 あったかいね 』
自分よりもずっと高いところから聞こえる声
見た目じゃ分からないけど
男らしいゴツゴツした身体
そのどれもが、わたしの鼓動を早める
「 優斗さん、そろそろ、」
『 もうちょっと 』
まるで壊れ物を扱うように
わたしのことを抱き締める
優斗さんの方が、わたしなんかよりも
もっとずっと傷付いてるでしょう
その優しさが、嬉しいはずなのに
辛くて、苦しくて
頬をひと粒、涙が伝った
「 もっと、あなたのことを知りたいの 」
涙と共に、心が溢れた
向き合う覚悟は出来ている
知らなくていいことなんてない
温もりがふと離れて
『 あの日、俺が死のうとしてた理由 』
彼のその言葉を境に
行き交う人の流れが
足音が
時間が
すべて止まって
わたしと彼だけがこの世界にいるような気がした
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Luv(プロフ) - ハルさん» ありがとうございます! いつになるかはまだ分かりませんが、必ず戻ってきます!! (2018年9月8日 20時) (レス) id: 5d6877df27 (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - すごく好きなお話だったので、また通知が来るのをずっと待ってます!お勉強頑張ってください! (2018年9月8日 19時) (レス) id: a070df98c4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Luv | 作成日時:2018年6月18日 18時