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82☆馬じゃなくって ページ32

それから2週間が経ったある日、Aは天野家を訪れていた。






また食事をごちそうになるという所長と、
ナツメに野暮用があるというアキノリも一緒である。







今日もよく晴れている。庭に出る窓をちらりと見ると、干された洗濯物がそよそよと風に吹かれていた。






「コウモリとトイ・プードルに
そっくりなUMAか……実に興味深い。





ぜひとも捕まえて、研究したいところだ」






「コウモリとトイ・プードルを捕まえる?
コウモリはともかく、




トイ・プードルはペットショップにしかいないわよ」






所長の言葉にフミカはそう言い、
空のグラスに冷たい緑茶を注いだ。




グラスの中の氷がカランと音を立てる。




「だからUMAなのだよ。
日本でも生息できる突然変異なのだよ。





U、M、Aと書いて、ユーマと読む」






「U、M、A……?





UMA(ウーマ)?馬のこと?」






天然なのか、わざとボケているのか、首を傾げたフミカに所長は椅子からずり落ちそうになった。






「ちが〜う!馬じゃなくってユーマ!
コウモリとトイ・プードルのユーマ!」





「あっははは!!
オッサンも形無しだな!」





アキノリは、所長がフミカに頼んで作ってもらった夏野菜カレーを、なぜか一緒に頬張りながら笑う。





「コウモリとトイ・プードルの妖怪か……。一体だれが妖怪ウォッチを使って悪いことをしてるの……?」





「A……」






ひとり物思いにふけるAを心配して、
アキノリは目を細めた。





するとそんなAに所長が声をかける。





「なぁ若園、今回の現象はUMAだよな〜。ペットショップにいる普通のトイ・プードルじゃなくって!」





「え、ええ……まぁ……」






Aが適当に受け流そうとすると、所長は嬉しそうな顔でAの肩をがっちりとつかんだ。






「だよな、だよな!
フミちゃんに、君からも説明しておくれ」






フミカがいるからなのか、異常にテンションが高い所長を不思議に思い、Aはグラスに入った緑茶のにおいを嗅いでみる。





アルコールは入っていないようだ。





そのとき、インターホンが鳴り、
フミカが立ち上がって玄関に向かう。






少しして、リビングに1人の男性が
慌てた様子で入ってきた。





「Aさん!所長!!」




「おぉ、須賀さんではないか」





所長はのんきにカレーを口に運ぶ。




Aは立ち上がって訊ねた。





「なんで須賀さんがここに?」

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作者名:惠里子 | 作成日時:2019年7月30日 19時

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