75☆未知の生き物 ページ25
「これらは、国の研究所でも調べたんですよね」
複数の小さな欠片が乗ったハンカチを慎重に受け取りながら不思議そうな顔をする日美子に、須賀はうなずいてみせる。
「もちろんです」
そう言ったきり黙ってしまった須賀。
Aはなんとなく察して、言った。
「だけど、分からなかった。
どんな生き物なのかさえ」
須賀はAの言葉に、首を何度も縦に振る。
「そ、そうそう、まさしくその通り！
日本はおろか、
世界のどこの生き物なのかも分からなくて」
所長はしばらく考え込んだあと、
須賀の方を向くと、声をひそめた。
「なるほど、なるほど……。となると、
それはつまり……うん、アレだな……」
Aはささやき声を聞こうと
身を乗り出した。
「所長、心当たりが!?」
「ある。
これはつまり、
Aは目をパチクリさせたが、
須賀は冷静にこう言う。
「UMA……未確認生物ですね」
「さすがは国の偉い人。
よくご存知で」
Aは須賀に話しかけようとして、
口をつぐんだ。
「あ、えっと……」
須賀は察したようで、
「『須賀』でいいですよ」とAに名乗る。
「じゃあ須賀さん、UMAって
なんなのですか？」
「見たとは言われているけど、
研究されていない生き物のことです。
つまり……要するに……、
雪男とか、ツチノコとか……。
最近の子には分からないかな。
ネッシーとか……」
須賀はいくつも例を挙げてくれたが、
Aにはいまいちピンと来なかった。
「どれも……ちょっと……」
すると所長が急に大声を出す。
「要するに、
捕まえられてない、未知の生き物ってことだ！
大いなる謎として、
ボクも非常に興味がある!!」
「所長、UMAについては、我々も想定しました。
しかし、そこからの絞り込みがまったく出来なくて……」
須賀が悔しげに目を細めると、
所長は納得してうなずいた。
「それはそうでしょうな。
しかしボクのLUNAには、
UMAについて豊富なデータがあります。
持ってきていただいたサンプルも
きっちり調べます」
「ありがとうございます……」
須賀が頭を下げると、所長は須賀に訊ねる。
「しかしまずは現場を見たいですな。
この近所ではどこか……？」
「このさくら元町でも、
２件の目撃例があります。
放水路の暗がりと……さくら駅です」
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作者名：惠里子 | 作成日時：2019年7月30日 19時
