70☆サマーカップ ページ20
次の週のこと。
朝、Aはそわそわしながら
身支度をしていた。
「今日は、サマーカップの日か……。
どうしようかなぁ……。
出て……見ようかな!!」
と決め、Aは緊張しながら家を出て、
ゲームセンターにやってきた。
「A」
Aはビクッとして振り返る。
「と、トウ、マ……」
慣れない呼び捨てに戸惑いながらAが答えると、トウマはいつも通りの落ち着いた声で言った。
「安心しなよ。あの件なら、
誰にも言ってないから」
妖怪のことを言っているのだと分かり、
Aの顔が少しこわばる。
「ほんとに……？」
「当たり前だよ。
大体、誰も信じないよ」
「それもそうか……。
ところでトウマもサマーカップに出場するの？」
Aが訊ねると、
トウマはあっけらかんと言った。
「いや。僕は
君のアドバイザーとして来たんだ」
「なんで出場しないの？」
不思議そうな顔をするAに、
トウマは微笑む。
「だって、自分のバトルで夢中になって、
君へのアドバイスができなくなるでしょ」
「そ、そのために？」
Aが目を見開くと、
トウマは声をひそめた。
「君は、悪を止めるために、もっともっと
『戦い』に強くならなくちゃいけないんでしょ？
僕も悪は許せないし、力を貸したいんだ」
「あ、ありがとう！ほんとにありがとう！」
正直、電光石火時代と妖怪の戦いとは関係ないような気もするが、Aはトウマの気持ちに心から感謝した。
トウマは少し照れたように頬をポリポリと掻く。
「ところでカップ戦って、
どんな仕組みでバトルするの？」
「うん。電光石火時代の勝ち抜き戦で、
３回勝ったらチャンピオンだよ」
Aはカバンからカードケースを取り出しながら、
不安な気持ちになった。
「３回かぁ……結構大変かも」
「君なら勝てるよ。
じゃあ、１つ目のアドバイス。
スペシャルカードは、出し惜しみしちゃダメだよ」
「う、うん！」
「スペシャルカード」という言葉に、
Aはピンと来た。
確か、伸也さんが現場に落としていったというカードも、
スペシャルカードだった……。
Aはカードケースから、邦子から
アークと一緒にもらった伸也のカードを取り出した。
「使って……みようかな」
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作者名：惠里子 | 作成日時：2019年7月30日 19時
