ふるや違いです！5【名探偵コナン】

12-13 ページ9

．




｢…｣



｢何かあったんじゃないかって凄く心配したし、そこらじゅう捜したんだけど｣



｢…ごめん、｣




ここは本当にポアロかと疑いたくなるほど、私たちの周りの空気だけ重々しく淀んでいる。


手元を見つめたたまま、怒りを抑えるように吐露するコナンくんに対して、私の謝罪の言葉は自然と漏れていた。


彼の両手で握りしめているグラスの中で、氷が熔けてカランと音が鳴る。




｢昴さんからAさんが居なくなったって連絡が来て本当に驚いた。その翌日にはあんなニュースも流れるし、下手したらAお姉さんが巻き込まれているんじゃないかって。僕は学校があったからずっとでは無いけれど、昴さんはここ数日の間、一日中かけてAお姉さんを捜してたんだよ…｣



｢ニュース…？｣




まさかそんな、数日にわたって尚も捜してくれていたなんて。


彼がそういう行動に出ることは予想できたことだけれど、書き置きも残したから大丈夫だろうと安易に考えてしまっていた。




｢ずっと一緒にいた大切な人が、ある日突然、紙切れ一つだけ残して居なくなってたら。Aお姉さんは耐えられる…？｣



｢ッ、｣





私のとった行動を改めて言葉にされて、残された方だったらと想像を働かせて、初めてそこで私のしてしまったことがどれだけ酷だったかを自覚する。情けないけど、この時まで私は私の行動を第三者として見たことは無かった。




取り乱す昴さんを、赤井さんを、私が実際に目にしたのは一度だけ。

それでも、ちゃんと鮮明に思い出せる。



荒々しく肩を上下させる赤井さんを。


目を見開く赤井さんを。



らしくもなく弱々しく伝えられた、赤井さんの想いも一緒に。

12-14→←12-12

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す