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すぐに横に並んだコナンくんに視線を向けると、コナンくんは首を横に振る。
「誰も居なかったよ」
「…そっか」
Aさんは確かに奥を指さして“かいとくん”が居ると言ったが、恐怖に魅せられた幻の人質だったのかもしれない。それか、Aさんを誘き出すために犯人グループの仲間が人質を演じていたか。もしかしたら、トランプを飛ばしてきた人物がその“かいとくん”だったのだろうか。
いくつかの謎は残るが、ともかく、不幸中の幸いか今のところ彼女と沖矢昴以外に被害者は居ない。彼女の状態を見るに被害は甚大だが…。
「…ゼロです!!」
「!」
突然聞こえた自分のかつてのあだ名、そして所属している部署の通称に、歩いていた足がピタッと止まる。心臓が跳ね上がり、咄嗟にその声の出処を探した。
「…、」
佐藤刑事が倉庫の入口で、何やらハキハキと報告をしている言葉が僕の耳に届いたようだ。
「どうしたの?安室さん、」
「…ん?あぁ、いや、僕のあだ名が“ゼロ”だったから、呼ばれたのかと思って」
「なんで“ゼロ?”名前は透なのに」
足を止めた僕に合わせて歩みを止め、すかさず突っ込んでくるコナンくん。真実を織り交ぜた返答に、コナンくんの探りを入れようとしている視線が鋭利に刺さってくる。
「僕の透の文字は“透けてる”っていう漢字なんだ。透けてるってことは何も無いってこと。つまり“ゼロ”。あだ名に法則なんてないし、子供が付けるものなら尚更ね」
それらしい言葉を並べて伝えると、眼光の鋭さは変わらないものの“ふーん”とだけ言って納得した素振りを見せた。
腕の中で縋るように僕のシャツの胸元を掴む彼女を見下ろしながら、コナンくんに「救急車に運ぶね」と言うとコナンくんは後ろを振り向いた。
「…僕、昴さんに付いてるね」
「あぁ。」
足音が遠ざかるのを聞いて、僕も再び歩き出す。
コナンくん達が僕を危険視していることは分かっている。僕が黒の組織でコードネームを持つ人間だと知り、警戒を強めているのは当然。それでも普通に接してくる僕が怪奇で仕方がないだろう。
コナンくんが“あの彼”が立ち上がるのを手伝っているのを一瞬だけ見て、僕は到着した救急のストレッチャーにAさんを寝かせた。
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あまね(プロフ) - いっそのこと一妻多夫制度設けません???? (8月19日 18時) (レス) @page48 id: 2b125e9969 (このIDを非表示/違反報告)
TAKE - 面白いですね!続き楽しみにしてます!頑張って下さい!! (7月2日 12時) (レス) @page48 id: 20d3cc00b9 (このIDを非表示/違反報告)
かるぴん(プロフ) - 面白すぎて一気読みしました!続きが気になりすぎます!! (2023年5月10日 5時) (レス) @page48 id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)
お話仕掛け人(プロフ) - ココナッツさん» お話楽しんでいただけて嬉しいです!感想もありがとうございます。これからの励みになります! (2023年5月4日 12時) (レス) id: 8b74387362 (このIDを非表示/違反報告)
ココナッツ(プロフ) - 初コメ失礼します!ふるや違いで平凡とは言えない生活を送ることになった主人公ちゃん…物語の流れに引き込まれ一気読みしてきました笑 最高に大好きな物語です´`* これからも応援してます! (2023年4月28日 12時) (レス) @page42 id: 160792ee1b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:お話仕掛け人 | 作成日時:2022年8月10日 17時