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みんな、死んでしまう。私のせいで…
今しがた見た光景が信じられず、とてもじゃないが受け止めきれない。
さっきまで向こうで戦っていたはずなのに、声がしたと思ったら銃声が響いて、気づけば目の前に安室さんの背中があった。
薄っすら飛んだ血飛沫が見えて、私の中でなにかが崩れる音がした。
ふと耳を澄ますと、誰かがどこかで忙しなく呼吸をしている音が聞こえる。
とっても苦しそうな呼吸音。籠ったような音が確かに確認できた。
もしかしたら快斗くんの息遣いがここまで聞こえているのだろうか。
そうだ、早く彼のことも助けないといけない。見えないところにいる彼に誰も気づいた様子を見せない。私が教えないといけないのに、声を出そうにも、どうすれば発声できるのか思い出せない。
彼は撃たれたけれど、まだ息のある状態なのかもしれない。いやしかし、あれからしばらく経っている。もう既に…、と最悪のことを考えそうになって途中で止める。
否、姿も見えないくらい奥に連れていかれた彼の僅かな呼吸音が、こんなに聞こえるのであれば、他の人が…それこそコナンくんが気づくはず。
なら、この音は誰から発せられているものなのだろうか。喘ぎ混じりの息、昴さんにしては高い気がする。
「、さん…」
その呼吸のスピードは治まりそうにないどころか、気道の狭くなったような異音混じりの呼吸に変わっていく。
十分に吸えていないのか、とても苦しそう。
「吐くんだ!!」
「Aさん!!息を吐いて!」
呼吸音しか聞こえない中、突然鼓膜を揺らした声。
「僕に合わせて呼吸するんです!」
「大丈夫、大丈夫だよ」
安室さんのしっかりとした声と、コナンくんの宥めるような声。小さな手が私の背中を摩っていることに気づいて、ようやく、私は自分の息苦しさに気づいた。
篭って聞こえていた音がだんだんとクリアになると同時に、鋭い耳鳴りが脳内に鳴り始める。そういえばずっと視界が閉ざされていたことにも、見えるようになった今気づいた。
目は開けていたはずなのに、そこから入ってくる情報の一切を遮断していたらしい。
「ッ、はぁ、はぁっはっ、ヒュー…はっ、」
「大丈夫です。ゆっくり、吸ってー、」
目の前で私を心配気に見ながら一緒に呼吸をしてくれる安室さん。ほっぺから血が垂れている。
その怪我は、もしかしなくても、さっき私を庇った時のものだ。
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あまね(プロフ) - いっそのこと一妻多夫制度設けません???? (8月19日 18時) (レス) @page48 id: 2b125e9969 (このIDを非表示/違反報告)
TAKE - 面白いですね!続き楽しみにしてます!頑張って下さい!! (7月2日 12時) (レス) @page48 id: 20d3cc00b9 (このIDを非表示/違反報告)
かるぴん(プロフ) - 面白すぎて一気読みしました!続きが気になりすぎます!! (2023年5月10日 5時) (レス) @page48 id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)
お話仕掛け人(プロフ) - ココナッツさん» お話楽しんでいただけて嬉しいです!感想もありがとうございます。これからの励みになります! (2023年5月4日 12時) (レス) id: 8b74387362 (このIDを非表示/違反報告)
ココナッツ(プロフ) - 初コメ失礼します!ふるや違いで平凡とは言えない生活を送ることになった主人公ちゃん…物語の流れに引き込まれ一気読みしてきました笑 最高に大好きな物語です´`* これからも応援してます! (2023年4月28日 12時) (レス) @page42 id: 160792ee1b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:お話仕掛け人 | 作成日時:2022年8月10日 17時