13-12 ページ36
.
「お喋りが弾んでるようだけどそろそろ時間だな」
男たちがまたぞろぞろと近づいてきた。先頭に立つ男は腕に包帯を巻いて吊っていた。それを見てピンとくる。
こいつがあの百貨店の時に私を撃とうとした男だ。風見さんの発砲によって腕に怪我をしていた、あのリーダーの男。
周りの不気味な笑みを浮かべる奴らと違い、この男だけは全面に“怒り”を出している。私たちを見下ろす目に殺意を宿している。
「もうお前を守るやつは此処にはいねえ。…復讐つーのは案外呆気ないんだなあ」
「あ!快斗くん!!」
「おい、はなせっ!」
動けないながらも身を寄せ合っていた快斗くんと私は男たちによって引き離される。
そのまま快斗くんは倉庫の中にいくつかある大きな柱の影へと引きずられて行ってしまった。奥の方なのでこちらからは様子は伺えない。
「彼に手を出さないで!!私だけで充分でしょ!!」
「充分なもんか。お前ら2人の命じゃ足りねえくらいだよ」
膝を着いて座らせられ、両側から肩をおさえられた格好のまま目の前の悪党を睨んで訴える。しかし、聞く耳は持って貰えない。
「いい加減にっ、」
───────パンッ
突然鳴り響いた大きな破裂音に体が跳ねた。
疑問に思うよりも先に視線を上げるが、目の前の男が撃った訳では無い。
そこでようやく脳が動きだし、一体どこから…と考えて、その音が倉庫の奥から聞こえてきたものだと気づく。
全身が氷水に浸かったようにサッと冷えた。
表情も体も凍りついて動かないのに、心臓だけは大きく脈打っている。
「おいおい、まさかもうやったのか?」
「あいつはせっかち野郎ですから」
男たちが、快斗くんが連れていかれた方を見ながら面白そうに話しているその内容から、快斗くんに向けられた銃が火を吹いたのだと確信した。
──私のせいで、彼が…
心を占めるのは絶望だけで、体も首も、指一本すら動かせない。
目尻に溜まっていた涙だけが滑り落ちていった。
「じゃあ、こっちもとっととやるか」
男が依然として鋭い目で私を見下ろしたながら、銃口を私の額に当てた。
人を…快斗くんを死なせてしまった私に、これに抗う権利なんて無い。
私は目を閉じてその時を待った。
もう誰の顔も思い浮かばなかった。ただ、津波のように押し寄せる罪悪感と自分への非難だけを感じながら歯を食いしばった。
カチ、と引き金に指のかかることがやけに大きく耳の奥に届いた
1606人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あまね(プロフ) - いっそのこと一妻多夫制度設けません???? (8月19日 18時) (レス) @page48 id: 2b125e9969 (このIDを非表示/違反報告)
TAKE - 面白いですね!続き楽しみにしてます!頑張って下さい!! (7月2日 12時) (レス) @page48 id: 20d3cc00b9 (このIDを非表示/違反報告)
かるぴん(プロフ) - 面白すぎて一気読みしました!続きが気になりすぎます!! (2023年5月10日 5時) (レス) @page48 id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)
お話仕掛け人(プロフ) - ココナッツさん» お話楽しんでいただけて嬉しいです!感想もありがとうございます。これからの励みになります! (2023年5月4日 12時) (レス) id: 8b74387362 (このIDを非表示/違反報告)
ココナッツ(プロフ) - 初コメ失礼します!ふるや違いで平凡とは言えない生活を送ることになった主人公ちゃん…物語の流れに引き込まれ一気読みしてきました笑 最高に大好きな物語です´`* これからも応援してます! (2023年4月28日 12時) (レス) @page42 id: 160792ee1b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:お話仕掛け人 | 作成日時:2022年8月10日 17時