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「殴り続けるってのも疲れるもんだな」
「休憩だ、きゅーけー」
「快斗くん…、」
やっと快斗くんへのリンチが終わり、男たちがそこを離れていく。私を押さえつけていた奴も立ち上がるとその男たちと合流したので、這って快斗くんへと近づいた。
「…へーきだよ、っ、」
「ご、ごめん…私のせいで、こんなことに…巻き込んで」
「あんたのせいじゃないって。アイツらがバカなのが悪いんだ」
傷だらけの姿を見て心が抉られるように痛くなる。服の下もきっと痣だらけだろう。それなのに、こんなに酷い状況なのに、私を安心させるためか笑顔を見せてくる。
それが余計に苦しかった。
「助けようと思ってきたのに、なにも…できなくて」
「俺もだ」
「もっと上手く立ち回れたら良かったのに、冷静に判断できなくてっ、」
「俺だってそうだ」
「ごめんっ」
「…泣くなよ」
言っているうちに、本当に不甲斐なくて情けなくて申し訳なくて、涙がポロポロ溢れてコンクリートにシミを作る。
「手を縛られてるから、あんたの涙を拭えないじゃないか」
快斗くんは困ったように眉をひそめて笑った。
「俺の方こそ、守ってあげられなくてごめん」
受け取ることなんてできない謝罪をされて私は黙って首を横に振った。
涙がそこを滑る時も、殴られた頬はジクジク痛み続けている。
「…助けは呼んだの。もし逃げられそうだったら、私のことは構わずに逃げて」
「正気か?そんなことできるかよ」
すぐ近くに男たちが居ないことを確認すると、こっそりと安室さんへ助けを求めたことを伝えた。
安室さんなら何かしらの助け手を出してくれるはずだから、快斗くんはそのうちに逃げて欲しいのに。彼は私から一向に目を離さず、当然のように否定してきた。
「お願いよ…。じゃなきゃ、今後一生後悔する」
「…」
尚も流れ続ける涙を無視して、快斗くんの目を見つめて必死の思いで懇願すると困った顔で黙ってしまった。
こみ上げる嗚咽を飲み込んでいると、快斗くんはふぅっ、吐息をもらす。
「わぁーったよ。でも俺が逃げる時はあんたも一緒な」
「分かってないじゃない…」
「この怪盗様を侮るなよ?あんた1人抱えて逃げるくらい朝飯前だ」
お互い手も足も出ないというのに得意げに言いきる快斗くん。ニヤリと笑う顔はやっぱり痛々しい。
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あまね(プロフ) - いっそのこと一妻多夫制度設けません???? (8月19日 18時) (レス) @page48 id: 2b125e9969 (このIDを非表示/違反報告)
TAKE - 面白いですね!続き楽しみにしてます!頑張って下さい!! (7月2日 12時) (レス) @page48 id: 20d3cc00b9 (このIDを非表示/違反報告)
かるぴん(プロフ) - 面白すぎて一気読みしました!続きが気になりすぎます!! (2023年5月10日 5時) (レス) @page48 id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)
お話仕掛け人(プロフ) - ココナッツさん» お話楽しんでいただけて嬉しいです!感想もありがとうございます。これからの励みになります! (2023年5月4日 12時) (レス) id: 8b74387362 (このIDを非表示/違反報告)
ココナッツ(プロフ) - 初コメ失礼します!ふるや違いで平凡とは言えない生活を送ることになった主人公ちゃん…物語の流れに引き込まれ一気読みしてきました笑 最高に大好きな物語です´`* これからも応援してます! (2023年4月28日 12時) (レス) @page42 id: 160792ee1b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:お話仕掛け人 | 作成日時:2022年8月10日 17時