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お昼に差し掛かった時、平日の割に混み合い始めて、梓さんと私は息付く暇なく動き回っていた。
私と同じように、長期休暇中であろう学生の姿もチラホラある。
頑張れ梓さん、頑張れ私。
ここを乗り越えたら落ち着けるはずだ。
「すいませーん」
「はーい!ただいまー」
己に言い聞かせながら急かせか動いていると、奥のテーブル席で手を挙げるお客さん。私は片付けていた食器を流しに置くと、すぐに駆け寄った。
「ご注文ですか?」
「注文っちゃ、注文だな」
「お伺いします」
そこに座っていたのは3人の若い男性。3人のニタニタとした笑顔が気味悪いが、お客さんであることに変わりはないので毅然と振る舞う。
「あんたが欲しい」
「…はい?」
1番手前にいた男が下から睨めるようにこちらを見て言った言葉が理解出来ず聞き返す。
新手のナンパでしょうか。
「俺らはあんたが欲しいんだよ」
「仰っている意味が、よくわからな、」
「あんただろ?米花百貨店の立て篭もりで、通報した女って」
聞き返す私を遮って発せられた奥に座る男の言葉に、私の心臓が大きく脈打った。
「やぁっと見つけたよ〜。苦労したんだぜ?」
「…お前のせいで俺たちの計画はめちゃくちゃだ」
「あ…、」
今目の前に座っている男たちが、あの覆面のヤツら。
私が恐れていた事が、安室さんが危惧していた事態が、ついに起きてしまった。
がっ、と腕を掴まれて体が強ばる。声は出ず、隅の席なこともあり誰も異変に気づいていない。
振り払おうと腕を引くけど、手の力がますます強くなり、引き寄せらた。転ばないように踏み出した1歩で、男の方に余計に近づく。
「ここでどうにかしようとは思ってねえよ」
「仕事終わり、あんたの方から俺たちの所へ来ることになるだろうしな」
「私の、方から?」
なんの事か分からず、言われた言葉を反復する。
「お前の弟が人質だ」
男たちはテーブルに手を着いて立ち上がると、今度は私を見下ろして言葉を続けた。
「無事に返して欲しけりゃ、必ず一人で来いよ?」
「いつまでも来なかったら、命の保証は無い。弟で無理なら次はお前の仲良しな小学生だ。それでもダメなら…あぁ、あの店員さんでもいいな」
そう言いながら男は腕を離すと、梓さんを顎で指した。
私の視線もつられて梓さんに向けられる。
息を呑む私を男たちは笑いながら隣を通り過ぎると、そのまま店を出て行った。
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あまね(プロフ) - いっそのこと一妻多夫制度設けません???? (8月19日 18時) (レス) @page48 id: 2b125e9969 (このIDを非表示/違反報告)
TAKE - 面白いですね!続き楽しみにしてます!頑張って下さい!! (7月2日 12時) (レス) @page48 id: 20d3cc00b9 (このIDを非表示/違反報告)
かるぴん(プロフ) - 面白すぎて一気読みしました!続きが気になりすぎます!! (2023年5月10日 5時) (レス) @page48 id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)
お話仕掛け人(プロフ) - ココナッツさん» お話楽しんでいただけて嬉しいです!感想もありがとうございます。これからの励みになります! (2023年5月4日 12時) (レス) id: 8b74387362 (このIDを非表示/違反報告)
ココナッツ(プロフ) - 初コメ失礼します!ふるや違いで平凡とは言えない生活を送ることになった主人公ちゃん…物語の流れに引き込まれ一気読みしてきました笑 最高に大好きな物語です´`* これからも応援してます! (2023年4月28日 12時) (レス) @page42 id: 160792ee1b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:お話仕掛け人 | 作成日時:2022年8月10日 17時