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「証人保護プログラムを受けるように言ったんだ」
「証人保護プログラムって、FBIの」
「あぁ。だけど、彼女はそれを望まなかった。それから軽く口論になって…」
「そっか…」
歩く道中でボウヤにことの成り行きを説明する。が、言葉にすると余計に情けなくて、言葉足らずの説明になってしまった。ボウヤはそれでも大方の流れを察してくれたようだ。
相当酷い人相になっているだろう自分の顔を覗き込むと、眉毛を八の字に寄せるボウヤ。
「とにかく、落ち着いて、ね?」
「あぁ…。」
「Aお姉さんなら大丈夫だよ」
そう慰めてくれるボウヤの表情も浮かないものだ。彼女がどれだけ気丈であっても、これはただの家出では済まない。
彼女の精神的ダメージは本人が思うよりもずっと深刻なものだ。足の傷もまだ完治していない。何より、昨日の今日だ。住む家が確保されているのかも怪しい。
どこに犯罪の手が伸びているかわからないこの土地で、夜にひとりで居たりしたら…。そう考えると気が気では無い。
「急に電話をしてすまなかった」
「いいよ。それより、僕も空き時間とかに探してみるから」
「ああ。俺はこの後も少し街を歩いてみるよ。案外路頭に迷ってその辺にいるかもしれない」
「…気をつけてね」
ボウヤが家に入るのを見届けて、踵を返す。ポアロの中も無人なようで、それを確認してから今度は大人の行き交う街に足を向けた。
まさかこの数時間後に、犯人どもが逃走するなんて。
最低最悪の事態だ。
ニュースであれだけ顔をハッキリと映されては、犯人に目をつけられるに違いない。逆恨みから、Aに逆襲をしに来るかもしれない。
また、彼女の苦しむ姿を見ることになるかもしれない…。
考えれば考えるほど最悪の結末ばかり思い浮かんで眠れなくなる。この街のどこかで、彼女がひとり怯えているかもしれないと思うと、いてもたってもいられず、可能な限り捜索に時間を費やす他無かった。
見えるところに…手の届くところに居てくれないと、こんなに不安になるとは。証人保護プログラムを勧めておきながら、俺がそばにいなければならない、なんて考えてしまうとは。
俺も相当重症だ。
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あまね(プロフ) - いっそのこと一妻多夫制度設けません???? (8月19日 18時) (レス) @page48 id: 2b125e9969 (このIDを非表示/違反報告)
TAKE - 面白いですね!続き楽しみにしてます!頑張って下さい!! (7月2日 12時) (レス) @page48 id: 20d3cc00b9 (このIDを非表示/違反報告)
かるぴん(プロフ) - 面白すぎて一気読みしました!続きが気になりすぎます!! (2023年5月10日 5時) (レス) @page48 id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)
お話仕掛け人(プロフ) - ココナッツさん» お話楽しんでいただけて嬉しいです!感想もありがとうございます。これからの励みになります! (2023年5月4日 12時) (レス) id: 8b74387362 (このIDを非表示/違反報告)
ココナッツ(プロフ) - 初コメ失礼します!ふるや違いで平凡とは言えない生活を送ることになった主人公ちゃん…物語の流れに引き込まれ一気読みしてきました笑 最高に大好きな物語です´`* これからも応援してます! (2023年4月28日 12時) (レス) @page42 id: 160792ee1b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:お話仕掛け人 | 作成日時:2022年8月10日 17時