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「はあぁ……」
お客様が誰もいないことをいいことにテーブルに突っ伏す。
こんな姿マスターに見られたらすごく怒られちゃうな……。想像してみて笑いが漏れた。
「月岡紬さん……」
この間月岡紬さんが出演していた舞台を見てから、目が合ったことをふとした時思い出してしまうようになった。
思い出しては緩んでしまう頬を軽く抓り活を入れる。
「仕事しなくちゃ」
小さな声でよし、と呟き心を入れ替える。いつまでも余韻に浸っている場合じゃないもんね。
突っ伏していたテーブルから離れ、布巾でテーブルを丁寧に拭き、机上を整える。
カラン、と心地よい鈴がなった。
「いらっしゃいませ」
馴染んだ言葉を口にしながら、音の鳴った扉の方を見て固まってしまった。
え……なんで……?
「えっと、まだ営業してませんでしたか……?」
困惑した表情のお客様。
我に返って駆け足でお客様の元へ向かう。
「失礼しました! 営業中ですので、お好きな席におかけ下さい」
お客様を放置してしまったことを詫び、店内へ誘導する。
驚きで心拍数が早くなっている。
鼓動を打つ音が煩く鳴り響く。
「ここが紬さんがお薦めしていたカフェなんっすね」
「僕も初めて来たんだけど、このカフェ友人に教えてもらったんだ」
店内には私と来店してくださった2人のお客様しかいないから自然と話し声が耳に入ってくる。
やっぱりそうだったんだ。
お冷を入れる手が震える。
まさか、とは思っていたけど、今の会話で確信した。来店してくださった2人のお客様のうち1人は、月岡紬さんだ……。
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みんとねこ。(プロフ) - keyさん» たくさんの作品がある中からこの作品を見つけてくださりありがとうございます。只今諸事情により更新が滞っておりますが、解決次第更新速度を上げていこうと思っています。更新を楽しみにしてくださり本当にありがとうございます! (2017年11月26日 18時) (レス) id: 574fff917a (このIDを非表示/違反報告)
key(プロフ) - 綺麗な表現と、自然なお話の流れにいつの間にか読み切っておりました。素敵な作品をありがとうございます。また更新いただける日があれば、楽しみにしております! (2017年11月24日 0時) (レス) id: fcdbe1e585 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みんとねこ。 | 作成日時:2017年10月13日 20時