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Lovers ページ1

「いってきまーす」

「あい。いってらっしゃい」

「カズ、ん。」

「…ん。」

「ふふ、じゃあね！」

「はい気をつけて」

「カズも早く服着なさいよ」

「うん」

いつのまにか毎朝の日課になった
短いキスを交わした後

くすぐったそうに笑う顔が好きだ

服着なさいよって、
ちょっと年上ぶるとこも好きだ

誕生日は、1ヶ月しか変わんないのに。

ひらひらと手を振り返す

長い髪が揺れる

扉が閉まる

1人になった部屋はやけに広くて
ちょっと寂しい、なんて思う

そんな自分を嘲笑っては、さっきまで潜ってた布団に戻る。あったかい。

まだあの子の匂いがするそこは昨日の夜を思い出させる。

雪みたいに真っ白な華奢な身体

真っ白なシーツに広がった艶のいい黒髪

ゆっくり、でも確実に上がる息づかい

赤く染まった頬

あぁ。

今朝、あの子が開いたカーテンから眩しい光がオレを照らす

その光はなんだか、こんなオレをバカにしてるみたいに思えて

また甘い香りに包まれて、オレはふ、と意識を手放す。

起きるともう昼過ぎだった。

スマホなんて持ってないオレは、ベッド横の目覚まし時計で時間を確認する。

寝間着であり部屋着でもあるグレーのスウェットはそのまま、ベッド下に落ちてる昨日脱ぎ捨てた白いVネックを着る

ペタペタと寝室を出て
あの子が出てった玄関は見ないふりして、

洗濯機のスイッチを押した

ぐるぐると回る洗濯物はオレのココロみたいで

一旦しゃがんでしばらく見つめる

ずっと見てられそうだと毎日思うけど、思うだけで毎日終わる。

顔洗って、歯磨いて朝食の食器を片付ける

ダイニングテーブルを拭いて掃除機をかける

洗濯を取り込んで、干して、畳んで片付ける

一通り終わったら、ラグの上にどーんと寝転んで

ベランダに干された洗濯物を見つめた。
太陽が眩しいと思いながら。

風が吹く

あの子の真っ白な下着が揺れた
オレのココロもパンツも揺れた

ずーっとそれを見てたら
空がだんだん暗くなってきた

オレをバカにする光は
オレの味方と場所交代するために海に沈む

月明かりは好きだ。

太陽みたいに堂々としてないし

こんなオレに優しくしてくれるし

あの子を色っぽく照らしてくれるし。

今日は買い物に行けって言われなかった

冷蔵庫に貰いもんの肉があるって言ってた

それでシチューでも作ろうか
そう言ったら笑ってた。

ねぇ、早く帰っておいでよ。