22話・本番 ページ26
いよいよ、だ。国内有数のビックイベントの一つ。
雄英体育祭！
根性と青春と目を惹く個性がぶつかり合う、日本で最も熱い祭典！！
と、盛り上がっているのはごく一部(主に私)で、周りはというと、昨日のテレビの話とか、雄英内に設置された屋台の話とか、とにかく気の抜けた雰囲気が漂っていた。
貴「涼風ちゃん！二針くん！雄英体育祭だよ！テレビの向こうの栄光が、まさに目の前で！生で！」
二「落ち着けよ、笹野」
涼「そ、そ。どーせ私たち引き立て役よ？いくら今年は1年が注目されてるからって、あくまでそれはA組のみ。同じヒーロー科のB組でさえ脇役みたいになってるのに、普通科なんてもう眼中にないっていうかさー」
なるほど。確かによく考えてみれば、私たち普通科にスポットが当たるなんてまずありえない話だ。観客たちはA組の話ばかりしているし、そりゃこっちからしてみれば面白くない話だった。
目の前で苛烈な個性を拝めることに執着していた私にとっては気にするようなことでもなかったが、なかなかそういうオタクばかりがいるわけもない。
少しだけ反省して、テンションを今一度落ち着け
貴「無理！落ち着かない！！さぁ来い…血肉沸き立たせる個性たちよ…余すことなく、この目に焼き付けてやろう…そのために私はこの雄英に入ったのだフフフフフ」
涼「ダメだね、完全にスイッチ入ってる」
口に溜まるヨダレを飲み込んで、私は謎のジャブを打った。寸前で二針くんに当たりそうになった。ごめん。
貴「あれ、そういえば心操くんは？」
涼「ん」
涼風ちゃんの指さす先に、彼はいた。
控え室の隅。静かな闘志。明らかに1人だけ、この腑抜けきった空気とは別の世界にいる。
その真っ直ぐな瞳に声をかけることすらできないまま、私たちは入場を促され、結局、心操くんと1度も会話をできないまま本番に臨むこととなった。
マ『ヒーロー科！！1年！！！A組だろぉぉ！！？』
ボイスヒーロー、プレゼント・マイクのアナウンスに連れられるよう、A組が入場する。続いておまけのように私たち他のクラスも会場に足を踏み入れた。
熱気。声援。視線。くぅ、これですよこれ。今年も雄英体育祭が始まったというこの感覚。
二「俺らって完全に引き立て役だよなぁ」
涼「たるいよねー…」
後ろから聞こえるクラスメイトたちのだるそうな声。心操くんは一瞬だけそれに視線を向けたが、すぐ前を見つめ直した。その視線は遠く、更に向こうを見つめているみたいだった。
さぁ、本番だ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 37人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
づけしば(プロフ) - 初恋とリンゴさん» コメントありがとうございます！心操くんほんといいキャラしてますよね…！何とか幸せにしてあげたいです (2017年8月2日 8時) (
レス) id: a5f73b5f12 (このIDを非表示/違反報告)
初恋とリンゴ(プロフ) - 作品面白いです(*^^*)心操君好きです。幸せになって欲しい(*´∀｀) (2017年7月31日 7時) (レス) id: 1696434808 (このIDを非表示/違反報告)
づけしば(プロフ) - 菜血さん» コメントありがとうございます！しばらく更新忘れててごめんなさい；切ない心操くん大好きなのでそう言っていただけると嬉しいです。更新頑張ります！ (2017年7月10日 16時) (レス) id: a5f73b5f12 (このIDを非表示/違反報告)
菜血(プロフ) - 初めまして。描写が綺麗でとても好きです。心操くん切ないですね、。更新頑張ってください！応援してます！ (2017年7月10日 6時) (レス) id: b16163533c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：づけしば | 作成日時：2017年6月7日 13時
