21話・新鋭 ページ23
宣戦布告の一件から教室に戻ると、なぜか私たちは数人のクラスメイトに囲まれた。
私たち――というのは少し語弊があり、正確には「心操くん」が、である。
女「見てたよアンタ！えっと、名前なんだっけ！？」
男「人に名前を聞く勢いかそれ？」
おでこを見せるように前髪を分けた女子と、アゴの突き出た男子、その後ろにはもう三人の生徒。皆、心操くんに注目している。
貴「えっと、心操くん…お友達？」
心「…知らない」
女「そうそう！心操だ！ヨロー」
女の子はにかっと笑って、フレンドリーに手を振った。随分と社交的な子だ。その横で男の子がため息をついている。彼女のお目付け役的存在なのだろうか。
涼「私、涼風鈴(すずかぜすず)。新学期の自己紹介で名乗ったよね？“個性”は涼風。夏は天国に連れていけるし、冬は地獄に突き落とせる！」
二「あの世行きは確定なのかよ…。あ、俺は二針計時(にしんけいじ)。“個性”は時間確認。今何時何分何秒かってのが分かる程度」
漫才のようなテンポで二人が自己紹介をしたものだから、私も釣られて名前と個性を名乗った。
涼「うーん、共感覚ってなんかカッコイイよね！私なんて扇風機と同レベルだよ。コイツは時計だし」
貴「日常生活においての利便性は高そうだね」
二「そういう問題なのか…」
涼「あ！そうそう！そうだよアンタ！」
心「…え、俺？」
突然話を振られて、心操くんはギョッとした。完全に上の空だったから、不意を突かれたようだ。
涼「見てたよ、さっきの。やるじゃん！」
二「まぁ、そのことで俺たち、話しかけたんだよ」
どうやら心操くんを取り囲んでいる彼らは、あの時の様子を見た人達らしかった。確かに、ただの普通科があのA組に挑戦を叩きつけたという光景は新鮮だっただろう。私も興奮した。
涼「根暗なやつかと思ってたけど、案外熱いんだね。そういう人好きだよ私、ヨロシク」
涼風ちゃんはそう笑って心操くんの肩を叩いた(彼の背が高いので少し背伸びをしていたような気がする)。
彼女の「好きだ」という言葉にはほんの少し動揺したけど、あまり気にしないようにした。いや、違うから。そういうことじゃないから。
心「……」
貴「どうしたの？心操くん」
心「帰る」
ところが心操くんは、あまりに素っ気なく自分の机に向かった。
涼「あれ？」
二「無愛想だな…」
違うのです。あれは――口に広がる甘酸っぱい味。
貴「照れ隠しなんだよ」
涼「そうなの？」
ふふ、共感覚を侮るなかれ。
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づけしば(プロフ) - 初恋とリンゴさん» コメントありがとうございます！心操くんほんといいキャラしてますよね…！何とか幸せにしてあげたいです (2017年8月2日 8時) (
レス) id: a5f73b5f12 (このIDを非表示/違反報告)
初恋とリンゴ(プロフ) - 作品面白いです(*^^*)心操君好きです。幸せになって欲しい(*´∀｀) (2017年7月31日 7時) (レス) id: 1696434808 (このIDを非表示/違反報告)
づけしば(プロフ) - 菜血さん» コメントありがとうございます！しばらく更新忘れててごめんなさい；切ない心操くん大好きなのでそう言っていただけると嬉しいです。更新頑張ります！ (2017年7月10日 16時) (レス) id: a5f73b5f12 (このIDを非表示/違反報告)
菜血(プロフ) - 初めまして。描写が綺麗でとても好きです。心操くん切ないですね、。更新頑張ってください！応援してます！ (2017年7月10日 6時) (レス) id: b16163533c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：づけしば | 作成日時：2017年6月7日 13時
