19話・宣戦 ページ21
「どんなもんかと見に来たが、ずいぶん偉そうだなぁ」
突然いなくなった心操くんの姿を探していると、前方から探すべき対象だったはずの声が聞こえる。
貴(ま、まさか…)
恐る恐る視線を持ち上げると、集団より頭一つ分大きい人影が、教室前の混雑をかき分けていた。
心「こういうの見ちゃうとちょっと幻滅するなぁ」
貴(心操くんッ！！？？)
基本的に人目を避けて行動する内向的なタイプの彼が、まさか、この騒ぎの中心に割り込むなんて…しかもやたら高圧的。そんなに不敵な性格だったっけ？
心「普通科とか他の科って、ヒーロー科落ちたから入ったって奴、けっこういるんだ。知ってた？」
心操くんの言葉には妙な重みがあった。それは、もし彼の言葉に一言でも返答しようものなら「洗脳」される、という緊張感ではなく、何やら内に秘めた「意志」のように感じられる。
そういえば私、心操くんの事情をほとんど知らないや。
心「体育祭のリザルトによっちゃ、ヒーロー科編入も検討してくれるんだって」
貴(編入…)
確か、入学のしおりに書いてあった気がする。「編入の手続き」みたいな項目。学校側に自分の能力をアピールすれば、ヒーロー科への編入もありうるという話だ。
しかし、担任も言っていたけれど、編入と言うのはまず異例の話で、ここ数年そんな生徒が雄英にいたことは無かった、と。
もしかして心操くんは…ヒーロー科に入りたかったの…？
私の知らない彼の奥底が、大衆の前で打ち明けられていく。私は本当に、彼のことをこれっぽっちも知らなかったんだという寂しさは、この場においてお門違いなのだろう。
心「敵情視察？少なくとも俺は――調子のってっと足元ごっそり掬っちゃうぞっつー、宣戦布告しに来たつもり」
その一言で、A組と視察組の間に亀裂が入った。教室と廊下を隔てて、私たちは敵対し合ったのだ。
えも言えぬ緊迫感。本気だ。心操くんは、マジでヒーロー科を討ち取りに行く気なのだ。
その大胆さに、A組の人たちは思わず息を呑む。きっと今頃「この人も大胆不敵だな！！」とか思ってるんだろう。同じクラスの私もびっくりです。
もう一人の不敵なA組男子生徒は、黙って心操くんを見据え続けていた。まるでその力量を推し量るかのように。
ただひたすら、踏み入ることが許されないような沈黙。
ちなみに、その沈黙を打ち破ったのは、更に不敵なB組の生徒だったけれど、とにかくこうして、A組とその他クラスの対抗意識はピークに達したのだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 37人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
づけしば(プロフ) - 初恋とリンゴさん» コメントありがとうございます！心操くんほんといいキャラしてますよね…！何とか幸せにしてあげたいです (2017年8月2日 8時) (
レス) id: a5f73b5f12 (このIDを非表示/違反報告)
初恋とリンゴ(プロフ) - 作品面白いです(*^^*)心操君好きです。幸せになって欲しい(*´∀｀) (2017年7月31日 7時) (レス) id: 1696434808 (このIDを非表示/違反報告)
づけしば(プロフ) - 菜血さん» コメントありがとうございます！しばらく更新忘れててごめんなさい；切ない心操くん大好きなのでそう言っていただけると嬉しいです。更新頑張ります！ (2017年7月10日 16時) (レス) id: a5f73b5f12 (このIDを非表示/違反報告)
菜血(プロフ) - 初めまして。描写が綺麗でとても好きです。心操くん切ないですね、。更新頑張ってください！応援してます！ (2017年7月10日 6時) (レス) id: b16163533c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：づけしば | 作成日時：2017年6月7日 13時
