13話・意外 ページ15
貴「どんまいどんまいっ！まぁまぁ、人間、得意不得意はあるもんだからね」
心「うるさい…慰めるな…惨めになる……って、にやけてんじゃねぇかお前っ…」
貴「ふふっ…だって、すごい間抜けに墜落した…ボール…」
心「お前…女だからっていよいよ殴るぞ…」
貴「心操くんしないもん。そんなこと。ってかできないでしょ…ふふふっ…」
心「ぐ…」
3時間目のグラウンド隅。
落ち込む少年の背中を叩く、嫌な笑顔の女一人。私である。
体力テスト第一種目は「ボール投げ」だった。
ひ弱そうな女子がヘロヘロと情けないボールを投げて、「やだー全然飛ばなかったー。恥ずかしー」と女子力たるものをアピールする不毛な測定である(あくまで個人の感想です)。
しかし、そんなあざとい女たちも、今回ばかりはそれを発揮しきれなかったようだ。
それは、目の前で私を睨みつけているこの男に原因がある。
私は22ｍという結果を出し、上々の出来栄えに満足しながら、続く男子の測定を眺めていた。あいにく、ボール投げと上体起こし、反復横飛びは昔から得意種目なのだ。なぜかわからないけど。
男たちは20ｍ近くを優に飛ばしながら、記録に一喜一憂していた。そんな中、やけに嫌そうな顔をして、心操くんが渋々ボールを手に持った。内心、どの程度の運動神経なのか、興味をそそられながらその動きを見る。
背が高い彼は、一見したら運動において悪くない結果を出しそうだった。周囲の人間も恐らくそう考えていたのだろう。
だから、あのボールの軌道は、意外としか言いようがなかった。
貴「…は？」
担「記録、7ｍ」
やたら空に上がったボールは、あっという間にその勢いを無くし、ぽとん物悲しげな面立ちで墜落した。男子で10ｍいかないのはちょっと…女子だって半数は今の記録を越せる。
私は堪えきれずに心操くんの元へ駆け寄った。
貴「どんまいどんまいっ！」
満面の笑みで。
心「帰りたい…」
貴「何言ってんの、まだ6種目残ってるって」
心「もう嫌だ…」
本気で辛そうな顔をする彼に、多少の同情を感じたが、それ以上に少しだけ可愛らしい彼の「苦手」を微笑ましく思ってしまう。
貴「次で挽回すればいいでしょ」
心「…次ってなんだよ」
貴「50ｍ走」
心「ダメだ…もう走れる気もしない…走れたところでどうせ11秒はかかる…」
貴「じゅ、11…ほんとに運動音痴なんだね…」
よしよしと彼の頭を撫でてあげれば、心底嫌そうな顔をされてしまった。
ほんと、どこまでも人を惹き込む男だ。
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づけしば(プロフ) - 初恋とリンゴさん» コメントありがとうございます！心操くんほんといいキャラしてますよね…！何とか幸せにしてあげたいです (2017年8月2日 8時) (
レス) id: a5f73b5f12 (このIDを非表示/違反報告)
初恋とリンゴ(プロフ) - 作品面白いです(*^^*)心操君好きです。幸せになって欲しい(*´∀｀) (2017年7月31日 7時) (レス) id: 1696434808 (このIDを非表示/違反報告)
づけしば(プロフ) - 菜血さん» コメントありがとうございます！しばらく更新忘れててごめんなさい；切ない心操くん大好きなのでそう言っていただけると嬉しいです。更新頑張ります！ (2017年7月10日 16時) (レス) id: a5f73b5f12 (このIDを非表示/違反報告)
菜血(プロフ) - 初めまして。描写が綺麗でとても好きです。心操くん切ないですね、。更新頑張ってください！応援してます！ (2017年7月10日 6時) (レス) id: b16163533c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：づけしば | 作成日時：2017年6月7日 13時
