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太陽が辺りを照らす時間には
翡翠が取れるらしいこの海岸。
地元民や観光客で賑わう砂浜も、月が姿を見せる頃には閑散としている。
そんな中で砂を踏みしめるふたつの足音。
サラサラの砂が素足に触れる感触が心地よく
寄せては返す波音だけがあたしたちを包む。
｢足だけ入れる？｣
『冷たそうじゃね』
｢それがいいんじゃん｣
このために短パンを履いてきた。
太ももまで浸かっても大丈夫なように。
｢ほら、めちゃいいよ。やまともおいでよ｣
手招きをして砂浜に佇むやまとを呼んだ。
頷いたやまとが、パシャパシャ水音を立ててこちらに来る。
だけど、その様子がどこかおかしくて。
月明かりの入らない瞳はあたしに向かって歩いてくるはずなのに
近づいてきても勢いが止まらない。
｢…やまと｣
伸ばした腕は空を切った。
通り過ぎていく。
当然、底は深くなる。
とっくにやまとの脚が浸かりきったところでやっと気づいた。
｢やまと！！｣
彼はどこまで行くつもりだっただろう。
この月明かりの夜。誰もいない新潟の海で。
｢やまとダメだよ戻って！｣
『なんで、』
｢当たり前でしょ？あんたは1人しかいないんだよ、
このまま足を進めて…一体何人が悲しむと思ってんの？｣
勢いがなくなった。
腰を引っ掴んで離れないあたしの叫びは、どれほど滑稽か知れない。
『なんでだよ』
分かってるよ。
次に出てくる言葉も、あんたの気持ちも。
『何で、誰かのために生きなきゃダメなの』
『俺の命だろ？』
｢……それ、あたしが全く同じこと言ったの覚えてる？｣
家から出られなかった。
毎日心から血が流れていた日々。
部屋の角で泣きじゃくり、やまとに手当り次第物を投げつけた日。
あなたはあたしの目を見て言ったじゃないか。
(( じゃあ、俺も死ぬよ ))
(( そしたら向こうでも寂しくないっしょ ))
命を捨ててもいいと言ってくれる友達などそう居るもんじゃないって
教えてくれたのはあなただった。
1人にさせないからと、何度も何度も伝えてくれた。
｢だから、やまとが死ぬならあたしも死ぬ｣
｢あたしの命ぐらい一緒に懸けれるよね｣
ゆらゆら、ゆらゆら。
海面もやまとの瞳も揺れている。
一筋の光が頬に流れた時、果てしない水平線に
やまとの慟哭が響き渡った。
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яeu(プロフ) - ららみさん» ご愛読ありがとうございました。ありがたいお言葉をいくつも並べていただけて大変嬉しく思います。新作を出した際にはぜひ覗きに来てください☺︎ (7月31日 19時) (
レス) id: c91b141c55 (このIDを非表示/違反報告)
ららみ(プロフ) - めちゃくちゃ好みど真ん中のお話で毎日更新されるのを楽しみにしていました😵💫💞完結は悲しいですがお話が素敵すぎて幸福感でいっぱいです、、！💘💘💘次のお話も楽しみにしています🫶🏻💓 (7月31日 0時) (レス) @page45 id: e947e550b2 (このIDを非表示/違反報告)
яeu(プロフ) - おりさん» ありがとうございます。ゆっくりではありますが確実に更新していきたいと思っております。 (7月13日 8時) (レス) id: c91b141c55 (このIDを非表示/違反報告)
おり(プロフ) - 楽しく読ませていただいてます。ご自身のペースで更新頑張ってください！ (7月12日 21時) (レス) @page25 id: 7292fb39fb (このIDを非表示/違反報告)
яeu(プロフ) - meloさん» 線香花火も読んでくださったのですね、随分時間が空いてしまったのにも関わらず読んでくださることに感謝です。ありがとうございます。 (6月28日 18時) (レス) id: c91b141c55 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：яeu | 作成日時：2023年6月19日 20時
