＿＿ ページ2
制服を着た青春など何ひとつ送れなかった。
行事も放課後もあたしにはなかった。
あるのは、6年分の空虚だけ。
エスカレーター式で大学に上がったけれど
あたしに近づいてくる人は皆記者と同じ目をしていて。
心を許せる友など出来ないのだと
あの世界に入るにはあまりに大きい代償を払ったのだと
家に閉じこもるようになった。
それでも彼は。
否彼らは、連絡をくれ続けた。
やまと今日そっち行っていい?
ひゅうがちゃんと食ってるか
ゆうまヴァイオレットエヴァーガーデン見てみて、めっちゃいいから
ゆうたドライブでも行く?
あっちゃんAにはあつきたちがついてるからね
返事は返してないのにお構い無しに彼らは家に来たし
お菓子開けてその辺散らかして勝手にテレビつけて
話して笑って帰ってった。
帰る時必ず彼らは言った。
(( じゃあまた来るからな ))
帰った後1人でゴミを片付けていると自然と笑みが零れていた。
何で一口も食べてないのにあたしが片付けてるんだろう、
……何で彼らはあたしを輪に入れてくれるのだろう。
夜、聞いた。
いちばん長い付き合いの彼に。
Aなんで気にかけてくれるの
既読はすぐついた。
やまと友達だからだよ、当たり前だろ
友達。
当たり前。
乾ききったあたしの目が、潤いを帯びる。
心を許せる友はずっと居てくれたのだ。
何も新しく作ろうとしなくたって。
視界が滲み、何も見えなくなったときエントランスのブザーが鳴った。
カメラを見れば、帰ったはずの彼が立ってた。
エントランスも部屋の鍵も開けて顔を見られないように俯く。
『姫のために、ヒーロー戻りました』
18の春。
玄関で彼に力強く抱きしめられたその時から
あたしはやまとが好きだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 294人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
яeu(プロフ) - ららみさん» ご愛読ありがとうございました。ありがたいお言葉をいくつも並べていただけて大変嬉しく思います。新作を出した際にはぜひ覗きに来てください☺︎ (7月31日 19時) (
レス) id: c91b141c55 (このIDを非表示/違反報告)
ららみ(プロフ) - めちゃくちゃ好みど真ん中のお話で毎日更新されるのを楽しみにしていました😵💫💞完結は悲しいですがお話が素敵すぎて幸福感でいっぱいです、、！💘💘💘次のお話も楽しみにしています🫶🏻💓 (7月31日 0時) (レス) @page45 id: e947e550b2 (このIDを非表示/違反報告)
яeu(プロフ) - おりさん» ありがとうございます。ゆっくりではありますが確実に更新していきたいと思っております。 (7月13日 8時) (レス) id: c91b141c55 (このIDを非表示/違反報告)
おり(プロフ) - 楽しく読ませていただいてます。ご自身のペースで更新頑張ってください！ (7月12日 21時) (レス) @page25 id: 7292fb39fb (このIDを非表示/違反報告)
яeu(プロフ) - meloさん» 線香花火も読んでくださったのですね、随分時間が空いてしまったのにも関わらず読んでくださることに感謝です。ありがとうございます。 (6月28日 18時) (レス) id: c91b141c55 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：яeu | 作成日時：2023年6月19日 20時
