Food Garden (ページ10)

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三面楚歌2(シャンパン/フォンダントケーキ) ページ10

Aの困ってる様子に、フォンダントケーキさんが少々凛とした声でシャンパンに詰め寄った。
　優しげな雰囲気の彼女だったが、Aをいたわるように、護る形でシャンパンとAの間に入る事のなんと凛々しい姿か。
　しかし、フォンダントケーキさんがそうしても、彼は一呼吸、気を落ち着かせる動作の後、彼女に疑問を投げかけた。
　
「彼女は困ってるのか？」
　
　心底分からない。そんな困り顔をして両手を広げている。
　彼が大きな両手のひらを広げると、小さな大衆食堂が丸呑みにされそうな気がした。
　
「俺みたいな頼りがいのありそうな食霊に求められてるんだぞ？……でも、そうだな。彼女は俺がわからない。俺達には段階というものが必要、というわけか。ではまずは贈り物を与えよう。何がいい？金か？国か？」
「何を言ってるか全くわからないわ。貴方は迷惑行為をしてる自覚を持つべきなの」
　
　フォンダントケーキさんのいさめる言葉が、食堂に響き渡る。
　そこでAは初めて、この危機を深刻に考えた。
　これは、店の客にナンパをされている、と言っていいのではないか？
　この理不尽な行為に、店の客が見守る中、Aは声を上げた。

「申し訳ありませんが、当店でそのようなサービスは受け付けておりません。貴方の言われてる事はわかりません。これ以上は店長を及びいたします」
　
　沈黙───。
　
　食堂の空気が張り詰めているのは、自分の気持ちがそうさせるだけだ。
　Aは自分にそう言い聞かせると、シャンパンは何故かAを見る目を緩ませ、自らの頬を緩ませ、愛しげな表情をさせた。
　
「美しい……」

　そしてそんな一言を放った。
　からかわれているのか？
　そんな事をAは考えていると、食堂の前にもう1台の車が停まった。
　今度は黒いベンツで、そこから黒い帽子に高そうなスーツ、首に1周しないで巻かれたショールを垂らした端正な顔立ちの、葉巻を加えた怖そうな男性と、赤い羽織に白のチャイナドレスを身にまとった快活な女性が出てきた。
　